シリーズ概要
本シリーズは、電子顕微鏡(SEM/TEM)の基礎原理から実践的な分析技術まで、Pythonを使った実践的なアプローチで学ぶ入門コースです。材料のナノスケール構造解析に必要な知識と技術を習得します。
学習の流れ
電子顕微鏡の基礎] --> B[第2章
SEM入門] B --> C[第3章
TEM入門] C --> D[第4章
STEMと分析技術] D --> E[第5章
統合分析実践] style A fill:#f093fb,stroke:#f5576c,stroke-width:2px,color:#fff style B fill:#f093fb,stroke:#f5576c,stroke-width:2px,color:#fff style C fill:#f093fb,stroke:#f5576c,stroke-width:2px,color:#fff style D fill:#f093fb,stroke:#f5576c,stroke-width:2px,color:#fff style E fill:#f093fb,stroke:#f5576c,stroke-width:2px,color:#fff
シリーズ構成
Pythonで学ぶ統合分析ワークフロー、HyperSpyによるデータ処理、機械学習分類、相同定、結晶方位解析、トラブルシューティングを実践します。
学習目標
このシリーズを完了することで、以下のスキルと知識を習得できます:
- ✅ 電子光学の基礎と分解能理論を理解し、観察条件を最適化できる
- ✅ SEM、TEM、STEMの原理と使い分けを説明できる
- ✅ 二次電子、反射電子、回折、EELS信号の物理的起源を理解できる
- ✅ EDS定量分析(ZAF補正)を実行し、結果を正しく解釈できる
- ✅ 電子回折パターン(SAED)の指数付けができる
- ✅ 高分解能TEM像のFFT解析と格子間隔測定ができる
- ✅ HyperSpyを使ってスペクトルデータを処理できる
- ✅ 機械学習を用いた相分類と元素マッピングができる
- ✅ EBSD方位解析とKAM/GND計算ができる
- ✅ 統合データから材料の組織-特性-プロセス相関を解明できる
推奨学習パターン
パターン1: 標準学習 - 理論と実践のバランス(5-7日間)
- 1日目: 第1章(電子顕微鏡の基礎)
- 2日目: 第2章(SEM入門)
- 3日目: 第3章(TEM入門)
- 4日目: 第4章(STEM技術)
- 5日目: 第5章(統合分析実践)+ 総合復習
パターン2: 集中学習 - 電顕マスター(3日間)
- 1日目: 第1-2章(基礎理論とSEM)
- 2日目: 第3-4章(TEMとSTEM)
- 3日目: 第5章(実践解析)+ 各章演習問題
パターン3: 実践重視 - データ解析スキル習得(1日)
- 第1-4章: コード例のみを実行(理論は参照程度)
- 第5章: じっくり取り組み、実際の電顕データで解析練習
- 必要に応じて理論部分に戻って確認
前提知識
| 分野 | 必要レベル | 説明 |
|---|---|---|
| 材料科学基礎 | 入門レベル完了 | 結晶構造、化学結合、材料の分類の理解 |
| 物理学 | 大学1-2年レベル | 電磁気学、波動光学、量子力学の基礎 |
| 数学 | 大学1年レベル | 微積分、線形代数、フーリエ変換の基礎 |
| Python | 中級 | numpy、matplotlib、pandas、scikit-image、HyperSpyの基本操作 |
使用するPythonライブラリ
このシリーズで使用する主要なライブラリ:
- numpy: 数値計算と配列操作
- matplotlib: 2Dグラフ・画像表示
- scipy: 科学計算(FFT、最適化、信号処理)
- pandas: データ処理と解析
- scikit-image: 画像処理
- HyperSpy: 電顕スペクトルデータ解析(EDS、EELS)
- pyxem: 電子回折データ解析
- orix: EBSD結晶方位解析
- kikuchipy: EBSDパターン解析
- scikit-learn: 機械学習(分類、クラスタリング)
FAQ - よくある質問
Q1: 電子顕微鏡の実機に触れた経験がなくても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。本シリーズは理論と計算・データ解析に焦点を当てています。実際の装置操作は扱いませんが、データ解釈とシミュレーションを通じて深い理解が得られます。
Q2: SEMとTEMの違いは何ですか?
SEM(走査型)は試料表面をビームで走査し、表面形態を観察します。TEM(透過型)は試料を透過した電子線で内部構造を原子レベルで観察します。第2章と第3章で詳しく説明します。
Q3: Materials Informatics(MI)との関係は?
電子顕微鏡データは材料のミクロ構造情報の宝庫です。本シリーズで学ぶデータ処理と機械学習技術は、MI における材料データベース構築、組織-特性相関モデリング、自動相分類に直接応用できます。
Q4: HyperSpyの習得は必須ですか?
第5章で重点的に扱いますが、基本的なnumpyとmatplotlibの知識があれば学習できます。HyperSpyは電顕コミュニティで広く使われているため、実務で非常に有用です。
Q5: 生物試料にも適用できますか?
本シリーズは材料科学(金属、セラミックス、半導体)に焦点を当てていますが、基本原理は生物試料にも共通です。ただし、試料作製法(固定、染色、包埋)は大きく異なります。
学習のポイント
- スケール感覚を養う: SEM(μm〜nm)、TEM(nm〜Å)、STEM(原子レベル)のスケールを意識
- 信号の物理的起源を理解: SE、BSE、回折、EELSがどこから来るのかを常に考える
- 定量化の重要性: 「きれいな像」ではなく数値データとして扱う習慣をつける
- コード実行とパラメータ変更: すべてのコード例を実行し、パラメータを変えて挙動を理解
- 実データでの練習: 第5章では、可能なら自分の研究データや公開データで解析練習
次のステップ
このシリーズを完了した後、以下の発展学習をお勧めします:
- 先端電子顕微鏡技術 - 環境TEM、in-situ観察、4D-STEM
- X線分析法入門 - XRD、XRF、XPS
- 原子分解能像解析 - 像シミュレーション、原子配列決定
- Materials Informatics実践 - 組織データベース構築と機械学習モデリング
- Process Informatics実践 - 電顕データ駆動型プロセス最適化