プロセス安全性評価入門シリーズ v1.0
安全性の基礎からHAZOP、FMEA、異常検知まで - 化学プロセス安全の完全実践ガイド
シリーズ概要
このシリーズは、化学プロセスの安全性評価の基礎から実践まで、段階的に学べる全4章構成の教育コンテンツです。プロセス安全の基本概念、HAZOP、FMEA、リスクアセスメント、異常検知まで、産業界で求められる安全性評価手法を体系的に習得します。
特徴:
- ✅ 実践重視: 30個の実行可能なPythonコード例
- ✅ 体系的構成: 基礎理論から産業応用まで段階的に学べる4章構成
- ✅ 産業応用: HAZOP、LOPA、SIL計算、F-N曲線の完全実装
- ✅ 最新技術: 機械学習による異常検知、リスク予測、安全分析自動化
総学習時間: 100-120分(コード実行と演習を含む)
学習の進め方
推奨学習順序
初学者の方(プロセス安全を初めて学ぶ):
- 第1章 → 第2章 → 第3章 → 第4章
- 所要時間: 100-120分
化学工学経験者(プロセス設計の基礎知識あり):
- 第1章(軽く確認) → 第2章 → 第3章 → 第4章
- 所要時間: 80-100分
安全管理経験者(HAZOPやFMEAの経験あり):
- 第3章 → 第4章
- 所要時間: 50-60分
各章の詳細
第1章:プロセス安全性の基礎
学習内容
- プロセス安全の概要
- プロセス安全とは(労働安全との違い)
- 重大事故の歴史(Bhopal、Flixborough、Texas City)
- 安全管理の階層(PSM: Process Safety Management)
- リスクの概念(ハザード vs リスク)
- ハザード識別フレームワーク
- ハザード分類(物理的、化学的、生物学的)
- ハザード識別手法(Checklist、What-if、HAZID)
- プロセスハザード分析(PHA)の概要
- Pythonでのハザード識別システム実装
- リスク評価の基礎
- リスクマトリックス(発生頻度 × 影響度)
- リスクランキングと優先順位付け
- 許容リスク基準(ALARP: As Low As Reasonably Practicable)
- リスクレジスターの構築
- 保護層分析(LOPA)
- LOPAの概念と手順
- 保護層の種類(IPL: Independent Protection Layer)
- リスク低減係数(Risk Reduction Factor)
- 安全度水準(SIL: Safety Integrity Level)計算
学習目標
- ✅ プロセス安全の概念と重要性を理解する
- ✅ ハザード識別フレームワークを実装できる
- ✅ リスクマトリックスでリスク評価ができる
- ✅ LOPA手法でSILを計算できる
- ✅ Bow-tie図でリスク分析を可視化できる
第2章:HAZOPとリスクアセスメント
学習内容
- HAZOPスタディの基礎
- HAZOP(Hazard and Operability Study)とは
- ガイドワード(No, More, Less, Reverse, etc.)の適用
- 逸脱分析(Deviation Analysis)
- 原因-影響-対策(Cause-Consequence-Safeguard)
- HAZOP自動化システム
- P&ID(配管計装図)の解析
- ガイドワード適用の自動化
- 逸脱シナリオの網羅的生成
- HAZOPレポートの自動生成
- 定量的リスクアセスメント(QRA)
- 事象頻度分析(Event Tree Analysis)
- 故障頻度データベース(Generic Failure Rate)
- 影響度計算(Consequence Modeling)
- 個人リスク vs 社会リスク
- F-N曲線とリスク基準
- F-N曲線(頻度-影響度曲線)の作成
- 許容リスク基準線(Tolerability Criteria)
- ALARPデモンストレーション
- リスクランキングと優先順位付け
学習目標
- ✅ HAZOPスタディを実践できる
- ✅ ガイドワードを用いた逸脱分析ができる
- ✅ QRAで定量的リスク評価ができる
- ✅ F-N曲線を作成しリスク判定ができる
- ✅ HAZOPレポートを自動生成できる
第3章:FMEAと信頼性評価
学習内容
- FMEA(故障モード影響解析)
- FMEAの概念と手順
- 故障モードの識別
- RPN(Risk Priority Number)の計算
- クリティカリティ分析
- 信頼性工学の基礎
- 信頼性関数とMTBF(平均故障間隔)
- ワイブル分布による寿命予測
- バスタブ曲線と故障率
- 冗長性設計(並列・直列システム)
- フォールトツリー解析(FTA)
- トップ事象の定義
- 論理ゲート(AND, OR)の構築
- 最小カットセット(Minimal Cut Set)
- システム信頼性の計算
- 予防保全最適化
- RCM(Reliability Centered Maintenance)
- 故障予測モデル
- 保全間隔の最適化
- リスクベース検査(RBI)
学習目標
- ✅ FMEAを実施しRPNで優先順位付けできる
- ✅ 信頼性関数とMTBFを計算できる
- ✅ FTAでシステム信頼性を解析できる
- ✅ 予防保全計画を最適化できる
- ✅ RBIでリスクベース検査ができる
第4章:異常検知とプロアクティブ安全
学習内容
- 機械学習による異常検知
- 教師なし学習(Isolation Forest, One-Class SVM)
- 統計的プロセス管理(SPC: Statistical Process Control)
- 時系列異常検知(LSTM, Autoencoder)
- プロセスデータの前処理
- 早期警告システム
- 異常スコアリング
- 閾値設定と最適化
- False Positive/Negativeのバランス
- リアルタイムモニタリング
- 根本原因分析(RCA)
- なぜなぜ分析(5 Whys)の自動化
- 因果関係分析
- 相関分析と特徴量重要度
- 事故調査支援ツール
- プロアクティブ安全文化
- 先行指標(Leading Indicators)
- 安全KPI(Key Performance Indicators)
- 安全パフォーマンスダッシュボード
- 継続的改善サイクル(PDCA)
学習目標
- ✅ 機械学習で異常検知システムを構築できる
- ✅ 早期警告システムを実装できる
- ✅ 根本原因分析を自動化できる
- ✅ 安全KPIダッシュボードを作成できる
- ✅ プロアクティブ安全文化を推進できる
全体の学習成果
このシリーズを完了すると、以下のスキルと知識を習得できます:
知識レベル(Understanding)
- ✅ プロセス安全の概念と重大事故の教訓を理解している
- ✅ ハザード識別とリスク評価の手法を知っている
- ✅ HAZOP、FMEA、FTAの理論を理解している
- ✅ 保護層分析とSIL計算の原理を知っている
- ✅ 異常検知と予防保全の最新技術を理解している
実践スキル(Doing)
- ✅ リスクマトリックスでリスク評価ができる
- ✅ HAZOPスタディを実施し逸脱分析ができる
- ✅ LOPAでSILを計算できる
- ✅ F-N曲線を作成しリスク判定ができる
- ✅ FMEAでRPNを計算し優先順位付けできる
- ✅ 機械学習で異常検知システムを構築できる
応用力(Applying)
- ✅ 実際の化学プロセスの安全性評価ができる
- ✅ HAZOPレポートを自動生成できる
- ✅ リスクベース検査計画を策定できる
- ✅ 早期警告システムを実装できる
- ✅ プロセス安全エンジニアとして安全管理業務に対応できる
FAQ(よくある質問)
Q1: 化学工学の予備知識はどの程度必要ですか?
A: 化学工学の基礎(物質収支、反応工学、単位操作)とリスク管理の基本概念を理解していることが望ましいです。大学2-3年レベルの化学工学を履修していることを前提としています。
Q2: HAZOPやFMEAの実務経験は必要ですか?
A: いいえ、必要ありません。このシリーズでは、HAZOPやFMEAの基礎から実践まで段階的に学べます。ただし、実務での適用には専門家の指導が推奨されます。
Q3: どのPythonライブラリが必要ですか?
A: 主にNumPy、Pandas、Scikit-learn、Matplotlib、Seabornを使用します。異常検知にはTensorFlow/Kerasも使用します。すべてpipでインストール可能です。
Q4: プロセスシミュレーションシリーズとの関係は?
A: プロセスシミュレーションシリーズで構築したモデルに、本シリーズの安全性評価手法を適用することで、設計段階での安全性検証が可能になります。両シリーズを組み合わせることで、安全で効率的なプロセス設計ができます。
Q5: 実際の化学プラントに適用できますか?
A: はい。本シリーズの手法は産業界で広く使用されています。ただし、実装時には安全規制、社内基準、専門家レビューが必要です。特に安全計装システム(SIS)の設計にはIEC 61511などの規格準拠が求められます。
次のステップ
シリーズ完了後の推奨アクション
Immediate(1週間以内):
1. ✅ 第4章の異常検知システムをGitHubに公開
2. ✅ 自社プロセスの安全性評価機会を評価
3. ✅ 簡単なリスクマトリックスを作成してみる
Short-term(1-3ヶ月):
1. ✅ 実プロセスでHAZOPスタディを実施
2. ✅ 機械学習による異常検知システムの構築
3. ✅ 安全KPIダッシュボードの作成
4. ✅ IEC 61511(SIS規格)の学習
Long-term(6ヶ月以上):
1. ✅ プロセス安全管理(PSM)システムの構築
2. ✅ リアルタイム異常検知システムの実装
3. ✅ 学会発表や論文執筆
4. ✅ プロセス安全エンジニアとしてのキャリア構築
フィードバックとサポート
このシリーズについて
このシリーズは、東北大学 Dr. Yusuke Hashimotoのもと、PI Knowledge Hubプロジェクトの一環として作成されました。
作成日: 2025年10月26日
バージョン: 1.0
フィードバックをお待ちしています
このシリーズを改善するため、皆様のフィードバックをお待ちしています:
- 誤字・脱字・技術的誤り: GitHubリポジトリのIssueで報告してください
- 改善提案: 新しいトピック、追加して欲しいコード例等
- 質問: 理解が難しかった部分、追加説明が欲しい箇所
- 成功事例: このシリーズで学んだことを使ったプロジェクト
連絡先: yusuke.hashimoto.b8@tohoku.ac.jp
ライセンスと利用規約
このシリーズは CC BY 4.0(Creative Commons Attribution 4.0 International)ライセンスのもとで公開されています。
可能なこと:
- ✅ 自由な閲覧・ダウンロード
- ✅ 教育目的での利用(授業、勉強会等)
- ✅ 改変・二次創作(翻訳、要約等)
条件:
- 📌 著者のクレジット表示が必要
- 📌 改変した場合はその旨を明記
- 📌 商業利用の場合は事前に連絡
詳細: CC BY 4.0ライセンス全文
さあ、始めましょう!
準備はできましたか? 第1章から始めて、プロセス安全性評価の世界への旅を始めましょう!
更新履歴
- 2025-10-26: v1.0 初版公開
あなたのプロセス安全学習の旅はここから始まります!