第3章: SQUID

磁束量子化、RSJモデル、ノイズの出所、そしてそれが量子ビットと同じ材料問題である理由

📖 読了時間: 45-50分 📊 難易度: 中級 💻 コード例: 5個 📝 演習問題: 5問

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第2章は1個の電子スピンの位相を見ることで磁場を測りました。本章は超伝導凝縮体の位相を見ることで測ります。そしてスケールが変わると答えのすべてが変わります。単一スピンはナノメートルの分解能とナノテスラの感度を与え、超伝導ループはマイクロメートルの分解能とフェムトテスラの感度を与えます。SQUIDは1964年以来もっとも高感度な磁力計であり続けており、その理由は1文に圧縮できます。磁場を測るのではなく磁束量子を数えるのであり、磁束量子はきわめて小さいのです。

この素子はまた、本コースの中で姉妹コースと最も近い共有物です。ジョセフソン接合はあらゆる超伝導量子ビットの非線形素子であり — 量子ハードウェア入門第2章 は1つの接合からトランズモンを組み立てます — そしてあらゆるSQUIDの位相感応素子です。同じ作製プロセス、同じトンネルバリア、同じ界面の同じアモルファス酸化物。違うのは動作領域です。量子ビットは位相が量子変数である $E_J/E_C \sim 50$ で走り、磁力計は位相が古典的で常微分方程式に従う6桁高いところで走ります。Code Example 1 がその比較を表にします。

その共通の系譜の成果は第3.3節で現れます。最良のSQUIDのノイズ床は回路設計ではなく2つの欠陥集団 — 超伝導体表面の不対スピンとトンネルバリア中の2準位揺動子 — で決まり、これらは磁束量子ビットの位相緩和とトランズモンの緩和を制限するまさに同じ2つの集団です。一方の材料的進歩は他方の材料的進歩です。この繋がりが本コースを貫く糸であり、本章はそれが最も鋭く描かれる場所です。

超伝導そのものは既知として扱います。本道場の 超伝導入門 が凝縮体、秩序変数、コヒーレンス長、ギャップを扱います。ここで使うのは巨視的な位相の存在と、そこから従うジョセフソン関係だけであり、第3.1節が以降の章に必要な形で両方を思い出します。

学習目標

本章を修了すると、以下のことができるようになります:

記法

磁場と磁束は全体を通じてSIです。磁束はウェーバ、磁束ノイズは $\sqrt{S_\Phi}$ を $\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ で(実用単位はマイクロ磁束量子 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$)、磁場ノイズは $\sqrt{S_B}$ を T/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$ で表します。第1章と第2章の感度記号 $\eta$ と量 $\sqrt{S_B}$ は同じものです。SQUIDの文献は後者、スピンの文献は前者を書くので、本章は周囲の議論が使うほうを使います。

エネルギーは各分野が使う単位で示します。量子ビットと比べるときは $E_J/h$ をGHzで、位相が古典的かを問うときは $E_J/k_B$ をケルビンで、エネルギー分解能 $\epsilon$ は $\hbar$ 単位で。$\epsilon$ をまともに比較できる尺度はそれしかないからです。


3.1 磁束量子化とジョセフソン効果

凝縮体全体に1つの位相

超伝導体は複素秩序変数 $\psi(\mathbf{r}) = \sqrt{n_s}\,e^{i\theta(\mathbf{r})}$ で記述され、超伝導電流密度は

$$ \mathbf{j}_s = \frac{n_s q}{m}\left( \hbar\nabla\theta - q\mathbf{A} \right), \qquad q = -2e $$

です。電荷 $2e$、質量 $2m_e$ のクーパー対についてのものです。括弧内の組合せがゲージ不変な量であり、これを超伝導体内部の閉ループで積分すると本章が依拠する主張が得られます。$\psi$ が一価なので $\oint \nabla\theta\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{\ell} = 2\pi n$($n$ は整数)であり、したがって

$$ \Phi + \frac{m}{n_s q^2}\oint \mathbf{j}_s\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{\ell} = n\,\frac{h}{2e} \;\equiv\; n\,\Phi_0 $$

となります。これがフラクソイド量子化です。量子化されるのは磁束に運動インダクタンスの項を加えたものであり、内部の電流密度が消える厚いリングでは第2項が落ちて磁束そのものが

$$ \Phi_0 = \frac{h}{2e} = 2.067\,833\,848 \times 10^{-15}\ \mathrm{Wb} $$

の単位で量子化されます。素子を作る前にこの数値について3つ気づいておく価値があります。含むのは $h$ と $e$ だけなので、現行のSIでは定義上厳密であり、どの実験室でも同一です。分母の因子2はクーパー対の電荷で、その実験的確認は対形成の初期の証明の1つでした。そして小さいのです。1辺10 $\mu$m のループは21 $\mu$T の磁場で磁束量子1個を囲むので、そのループでマイクロ磁束量子を分解することは21 pTを分解することを意味します。Code Example 1 がこれを表にし、それがSQUIDの存在理由のすべてです。

ジョセフソンの2つの関係

2つの超伝導体(位相 $\theta_1$、$\theta_2$)の間に弱結合 — 薄い絶縁バリア、くびれ、常伝導金属のブリッジ — を置き、そこを横切るゲージ不変な位相差を $\varphi$ とします。2つの関係が従い、本章のすべてはその帰結です。

$$ I = I_c \sin\varphi \qquad\text{(直流ジョセフソン効果)} $$

$$ \frac{\mathrm{d}\varphi}{\mathrm{d}t} = \frac{2\pi}{\Phi_0}V = \frac{2e}{\hbar}V \qquad\text{(交流ジョセフソン効果)} $$

第1式は最大 $I_c$ までは電圧なしに超伝導電流が流れることを述べます。第2式は電圧が位相を巻くことを述べ、その速さは $2e/h = 483.598$ MHz毎マイクロボルトです。これほど精密な換算なのでボルトの定義になっています。

導出量が2つ必要です。第1式を微分して第2式を代入すると $V = L_J\,\mathrm{d}I/\mathrm{d}t$ が得られ

$$ L_J(\varphi) = \frac{\Phi_0}{2\pi I_c \cos\varphi} $$

ジョセフソンインダクタンスです。非線形で電流依存のインダクタンスであり、姉妹コースでLC回路を人工原子にするのがまさにこれです。$IV$ を積分するとジョセフソンエネルギー

$$ E_J = \frac{I_c \Phi_0}{2\pi} = \frac{\hbar I_c}{2e} $$

が得られます。

同じ接合、2つの領域

接合は2つのエネルギースケールをもつ回路素子です。位相を静止させたい $E_J$ と、位相をゆらがせたい充電エネルギー $E_C = e^2/2C$ です。その比が位相が量子変数かどうかを決めます。

トランズモンは $E_J/E_C \approx 50$ に設計されます。電荷ノイズが指数関数的に抑制されるほど大きく、しかし非調和性が残るほど小さい — 姉妹コースが詳しく解析する妥協点です。SQUID磁力計の接合はナノアンペアではなくマイクロアンペアを運びピコファラドでシャントされるので、5桁から6桁高いところに位置します。$E_J/k_B$ が数百ケルビンなら位相は4 Kで測定可能な量子ゆらぎをもたず、正しい記述は古典的な運動方程式です。これは制限ではなく許可です。第3.2節の全体を常微分方程式にできるのはこのおかげです。

Code Example 1: スケール、干渉、遮蔽パラメータ

import numpy as np

H = 6.62607015e-34          # プランク定数、J s
HBAR = H / (2 * np.pi)
E = 1.602176634e-19         # 電気素量、C
KB = 1.380649e-23           # ボルツマン定数、J/K
PHI0 = H / (2 * E)          # 超伝導磁束量子、Wb
MU0 = 4 * np.pi * 1e-7      # T m / A

print("本章が依拠する2つの定数")
print(f"  Phi_0 = h/2e            = {PHI0:.9e} Wb = {PHI0*1e15:.6f} fWb")
print(f"  Phi_0 / (1 um^2)        = {PHI0/1e-12*1e3:.4f} mT")
print(f"  2 e / hbar              = {2*E/HBAR:.6e} rad/(s V)")
print(f"  2 e / h                 = {2*E/H:.6e} Hz/V = "
      f"{2*E/H*1e-6/1e6:.4f} MHz/uV")

# --- 磁束量子は磁力計にとって何を意味するか --------------------------------
print("\n磁束量子1個は何テスラに相当し、uPhi_0 の分解能は何を買うか:")
print(f"{'loop side':>12}{'area (m^2)':>13}{'Phi_0 / A':>14}"
      f"{'1 uPhi_0 / A':>16}")
print("-" * 55)
for label, side in [("1 um", 1e-6), ("10 um", 1e-5), ("100 um", 1e-4),
                    ("1 mm", 1e-3), ("10 mm", 1e-2)]:
    A = side**2
    print(f"{label:>12}{A:>13.3e}{PHI0/A*1e3:>11.4g} mT"
          f"{PHI0/A*1e-6*1e12:>13.4g} pT")
print("  10 mm のループでマイクロ磁束量子の分解能は 20 fT です。SQUIDが現存最高")
print("  感度の磁力計である理由はこれに尽きます。測るのは磁束であり、磁束は")
print("  きわめて小さな単位で量子化されているからです。")

# --- ジョセフソンのエネルギースケール: 同じ接合、2つの役割 ------------------
def e_josephson(Ic):
    """E_J = Ic Phi_0 / (2 pi) をジュールで返します。"""
    return Ic * PHI0 / (2 * np.pi)


def l_josephson(Ic):
    """位相ゼロにおけるジョセフソンインダクタンス L_J = Phi_0 / (2 pi Ic) です。"""
    return PHI0 / (2 * np.pi * Ic)


print("\n同じトンネル接合を量子ビット素子として、そしてセンサ素子として使う:")
header = (f"{'role':>26}{'I_c':>10}{'E_J/h (GHz)':>13}{'E_J/kB (K)':>12}"
          f"{'L_J':>11}{'C':>9}{'E_J/E_C':>11}")
print(header)
print("-" * len(header))
for role, Ic, C in [("transmon junction", 30e-9, 80e-15),
                    ("flux-qubit junction", 300e-9, 5e-15),
                    ("shunted SQUID junction", 5e-6, 1e-12),
                    ("shunted SQUID junction", 20e-6, 1e-12)]:
    EJ = e_josephson(Ic)
    EC = E**2 / (2 * C)
    Ic_s = f"{Ic*1e9:.0f} nA" if Ic < 1e-6 else f"{Ic*1e6:.0f} uA"
    LJ = l_josephson(Ic)
    LJ_s = f"{LJ*1e9:.2f} nH" if LJ > 1e-10 else f"{LJ*1e12:.1f} pH"
    print(f"{role:>26}{Ic_s:>10}{EJ/H/1e9:>13.4g}{EJ/KB:>12.4g}"
          f"{LJ_s:>11}{C*1e15:>7.0f} fF{EJ/EC:>11.4g}")
print("  トランズモンは E_J/E_C が50程度にあり、位相は量子変数でその零点運動が")
print("  量子ビットです。シャントされたSQUIDの接合はそれより5桁から6桁高いので")
print("  位相は古典的であり、次の例のRSJ方程式が正しい記述になります。")

# --- dc SQUIDの干渉パターン ------------------------------------------------
# ループ内に同一の接合が2つあります。ループインダクタンスが無視できるとき位相差
# は囲む磁束で固定され、phi_2 - phi_1 = 2 pi Phi/Phi_0 となり、最大超伝導電流は
# I_c(Phi) = 2 I_0 |cos(pi Phi/Phi_0)| です。
def ic_of_flux_numeric(phi_e, n=200001):
    """インダクタンスゼロで I_0 (sin phi_1 + sin phi_2) を phi_1 について最大化します。"""
    p1 = np.linspace(0.0, 2 * np.pi, n)
    return np.max(np.sin(p1) + np.sin(p1 + 2 * np.pi * phi_e))


print("\nインダクタンスゼロの干渉パターン I_c(Phi) / 2 I_0:")
print(f"{'Phi/Phi_0':>11}{'numeric':>12}{'|cos(pi Phi/Phi_0)|':>22}")
print("-" * 45)
for pe in [0.0, 0.1, 0.25, 0.4, 0.5, 0.75, 1.0]:
    print(f"{pe:>11.2f}{ic_of_flux_numeric(pe)/2:>12.8f}"
          f"{abs(np.cos(np.pi*pe)):>22.8f}")
print("  パターンは Phi_0 周期で、半整数磁束で消えます。SQUIDは光路差が磁束で")
print("  ある干渉計であり、その縞間隔は自然定数です。")

# --- 遮蔽: 理想パターンを損なう唯一のパラメータ ------------------------------
def beta_L(L, I0):
    """遮蔽パラメータ beta_L = 2 L I_0 / Phi_0 です。"""
    return 2.0 * L * I0 / PHI0


print("\n現実的な素子における遮蔽パラメータ beta_L = 2 L I_0 / Phi_0:")
print(f"{'L':>10}{'I_0':>10}{'beta_L':>10}{'L I_0 (Wb)':>14}"
       f"{'circulating current at Phi_0/2':>32}")
print("-" * 76)
for L, I0 in [(10e-12, 5e-6), (100e-12, 5e-6), (200e-12, 5e-6),
              (100e-12, 20e-6), (1e-9, 20e-6)]:
    bl = beta_L(L, I0)
    print(f"{L*1e12:>8.0f} pH{I0*1e6:>8.0f} uA{bl:>10.4f}{L*I0:>14.4e}"
          f"{PHI0/(2*L)*1e6:>29.3f} uA")
print("  beta_L が1付近であることが設計目標です。小さすぎれば磁束電圧変換が小さく、")
print("  大きすぎれば遮蔽が変調を消します。同時に L I_0 を Phi_0/2 程度に固定する")
print("  ので、SQUIDループを大きくしつつ高感度にすることはできません。")
本章が依拠する2つの定数
  Phi_0 = h/2e            = 2.067833848e-15 Wb = 2.067834 fWb
  Phi_0 / (1 um^2)        = 2.0678 mT
  2 e / hbar              = 3.038535e+15 rad/(s V)
  2 e / h                 = 4.835978e+14 Hz/V = 483.5978 MHz/uV

磁束量子1個は何テスラに相当し、uPhi_0 の分解能は何を買うか:
   loop side   area (m^2)     Phi_0 / A    1 uPhi_0 / A
-------------------------------------------------------
        1 um    1.000e-12      2.068 mT         2068 pT
       10 um    1.000e-10    0.02068 mT        20.68 pT
      100 um    1.000e-08  0.0002068 mT       0.2068 pT
        1 mm    1.000e-06  2.068e-06 mT     0.002068 pT
       10 mm    1.000e-04  2.068e-08 mT    2.068e-05 pT
  10 mm のループでマイクロ磁束量子の分解能は 20 fT です。SQUIDが現存最高
  感度の磁力計である理由はこれに尽きます。測るのは磁束であり、磁束は
  きわめて小さな単位で量子化されているからです。

同じトンネル接合を量子ビット素子として、そしてセンサ素子として使う:
                      role       I_c  E_J/h (GHz)  E_J/kB (K)        L_J        C    E_J/E_C
--------------------------------------------------------------------------------------------
         transmon junction     30 nA         14.9      0.7151   10.97 nH     80 fF      61.54
       flux-qubit junction    300 nA          149       7.151    1.10 nH      5 fF      38.46
    shunted SQUID junction      5 uA         2483       119.2    65.8 pH   1000 fF  1.282e+05
    shunted SQUID junction     20 uA         9934       476.7    16.5 pH   1000 fF  5.128e+05
  トランズモンは E_J/E_C が50程度にあり、位相は量子変数でその零点運動が
  量子ビットです。シャントされたSQUIDの接合はそれより5桁から6桁高いので
  位相は古典的であり、次の例のRSJ方程式が正しい記述になります。

インダクタンスゼロの干渉パターン I_c(Phi) / 2 I_0:
  Phi/Phi_0     numeric   |cos(pi Phi/Phi_0)|
---------------------------------------------
       0.00  1.00000000            1.00000000
       0.10  0.95105652            0.95105652
       0.25  0.70710678            0.70710678
       0.40  0.30901699            0.30901699
       0.50  0.00000000            0.00000000
       0.75  0.70710678            0.70710678
       1.00  1.00000000            1.00000000
  パターンは Phi_0 周期で、半整数磁束で消えます。SQUIDは光路差が磁束で
  ある干渉計であり、その縞間隔は自然定数です。

現実的な素子における遮蔽パラメータ beta_L = 2 L I_0 / Phi_0:
         L       I_0    beta_L    L I_0 (Wb)  circulating current at Phi_0/2
----------------------------------------------------------------------------
      10 pH       5 uA    0.0484    5.0000e-17                      103.392 uA
     100 pH       5 uA    0.4836    5.0000e-16                       10.339 uA
     200 pH       5 uA    0.9672    1.0000e-15                        5.170 uA
     100 pH      20 uA    1.9344    2.0000e-15                       10.339 uA
    1000 pH      20 uA   19.3439    2.0000e-14                        1.034 uA
  beta_L が1付近であることが設計目標です。小さすぎれば磁束電圧変換が小さく、
  大きすぎれば遮蔽が変調を消します。同時に L I_0 を Phi_0/2 程度に固定する
  ので、SQUIDループを大きくしつつ高感度にすることはできません。

注目すべき点。 面積あたりの磁束の表が感度の議論を1列に収めたものです。10 mmのループでは1マイクロ磁束量子が20 fTであり、マイクロ磁束量子は第3.3節が第一原理から導くように良質なSQUIDが1秒で分解する量におおよそ相当します。このループに特別なところはありません。小ささは $\Phi_0$ から来ます。

領域の表が1つの接合の2つの用途を位置づけます。30 nAのトランズモン接合は $E_J/h = 14.9$ GHz、$E_J/k_B = 0.72$ K、5 $\mu$A のシャントされた磁力計接合は $E_J/h = 2483$ GHz、$E_J/k_B = 119$ K、$E_J/E_C = 1.3\times10^5$ でトランズモンの62に対比されます。臨界電流の3桁がエネルギー比の5桁になるのは、シャント容量も大きくなるからです。ジョセフソンインダクタンスも示唆的です。量子ビット接合の11 nHに対しセンサは66 pHで、後者はそれが座るループの幾何インダクタンスと同程度であり、これが下の遮蔽パラメータの起源です。

干渉パターンは $2I_0|\cos(\pi\Phi/\Phi_0)|$ を8桁まで再現します。$\sin\varphi_1 + \sin(\varphi_1 + 2\pi\Phi/\Phi_0)$ を $\varphi_1$ について最大化するだけで得られたものです。半整数磁束での零点はこの極限で厳密であり、次節がそれを壊すものを示します。

最後の表がこれまで作られたあらゆるSQUIDを形づくった制約です。遮蔽パラメータ $\beta_L = 2LI_0/\Phi_0$ は1付近でなければならず、それが $LI_0 \approx \Phi_0/2 \approx 10^{-15}$ Wb を固定します。$L$ はループの大きさとともに増えるので、大きいループは小さい臨界電流を要求し、小さい臨界電流は小さい信号電圧を意味します。SQUIDを大きくしつつ高感度にすることはできません。だから第3.4節が示すように、大きな面積は別のピックアップコイルに住むのです。


3.2 dc SQUID

2つの接合と1つの拘束条件

dc SQUIDは2つの接合で切られた超伝導ループです。ループを回ると、2つの接合を横切るゲージ不変な位相差と囲まれた磁束は独立ではありません。

$$ \varphi_2 - \varphi_1 = \frac{2\pi\Phi_{\mathrm{tot}}}{\Phi_0}, \qquad \Phi_{\mathrm{tot}} = \Phi_{\mathrm{ext}} + L J $$

$J$ は循環電流、$L$ はループインダクタンスです。第2式がこの素子を興味深い形で非線形にします。ループは印加磁束を遮蔽し、どれだけ遮蔽するかはすでにどれだけ電流を運んでいるかに依存するのです。

$L \to 0$ の極限では拘束条件は剛くなり $\varphi_2 - \varphi_1 = 2\pi\Phi_{\mathrm{ext}}/\Phi_0$ となって、最大超伝導電流は $I_0(\sin\varphi_1 + \sin\varphi_2)$ を最大化して

$$ I_c(\Phi) = 2 I_0 \left| \cos\frac{\pi\Phi}{\Phi_0} \right| $$

と得られます。光路差が磁束であり縞間隔が自然定数である二重スリット干渉パターンです。この素子が磁力計ではなく干渉計と呼ばれる理由でもあります。

遮蔽

有限の $L$ ではループは囲む磁束を変えるために循環電流を作らねばならず、その電流は接合が運べる分から差し引かれます。半磁束量子を排除するには $J = \Phi_0/2L$ が必要なので、$I_c(\Phi)$ の変調の深さは

$$ \beta_L = \frac{2 L I_0}{\Phi_0} $$

で制御されます。$\beta_L \ll 1$ なら理想パターンが残り、$\beta_L \gg 1$ なら遮蔽が消してしまいます。最適点は $\beta_L \approx 1$ 付近であり、Code Example 2 は近似式を引用するのではなくパターンを数値計算します。$I_c(\Phi_0/2)$ の標準的な近似は漸近的なものにすぎないからです。

RSJモデル

臨界電流ではなく電圧を得るには、$I_c$ を超えてバイアスし位相を巻かせます。標準的な古典的記述は抵抗容量シャント接合モデルであり、各接合をジョセフソン素子と抵抗 $R$、容量 $C$ の並列とみなすので、全電流は

$$ I_k = I_0\sin\varphi_k + \frac{\Phi_0}{2\pi R}\dot{\varphi}_k + \frac{\Phi_0 C}{2\pi}\ddot{\varphi}_k $$

です。自然な時間 $t_c = \Phi_0/(2\pi I_0 R)$、電流の単位 $I_0$、電圧の単位 $I_0R$ で無次元化します。バイアス電流を $i_b$、$\varphi_e = \Phi_{\mathrm{ext}}/\Phi_0$、$j = J/I_0$ と書くと2つの接合は

$$ \begin{aligned} \beta_c\, \varphi_1'' + \varphi_1' + \sin\varphi_1 &= \frac{i_b}{2} + j \cr \beta_c\, \varphi_2'' + \varphi_2' + \sin\varphi_2 &= \frac{i_b}{2} - j \cr j &= \frac{(\varphi_2 - \varphi_1) - 2\pi\varphi_e}{\pi\beta_L} \cr v &= \frac{\varphi_1' + \varphi_2'}{2} \end{aligned} $$

に従い、Stewart-McCumberパラメータ

$$ \beta_c = \frac{2\pi I_0 R^2 C}{\Phi_0} $$

が質量の役割を果たします。$\beta_c > 1$ では位相粒子が不足減衰でI-V特性がヒステリシスをもち、素子は連続的な変換器として使えません。いったん電圧状態に飛ぶとそこに留まるからです。したがって実用的なdc SQUIDはすべて $\beta_c$ を1以下にするために意図的にシャント抵抗を付けています。抵抗を足すことは散逸を足すことであり、散逸を足すことはノイズを足すことです。それが第3.3節の主題そのものです。$\beta_c = 0$ とすると系は1階の2式になり、Code Example 2 が積分するのはその領域です。

$V(\Phi)$ から磁力計へ

$I_c(0)$ のすぐ上でバイアスして印加磁束を掃引します。時間平均電圧は周期 $\Phi_0$ で振動し、有用な性能指標は最急点における傾き

$$ V_\Phi = \left|\frac{\partial V}{\partial \Phi}\right|_{\max} \sim \frac{R}{L} $$

すなわち磁束電圧伝達関数です。帰結が2つあります。第1に応答は周期的なので、生の $V(\Phi)$ の読みは $\Phi_0$ を法として曖昧であり絶対測定としては使えません。第2に非線形なので大きな信号は歪みます。

どちらも同じ工夫で治ります。磁束ロックループは増幅した電圧をSQUIDに結合したコイルへの電流としてフィードバックし、その符号を全磁束の変化を打ち消すように選びます。SQUIDは $V(\Phi)$ 曲線上の固定点に保たれて動かず、出力はフィードバック電流であり、これは印加磁束について多数の磁束量子にわたって線形で、素子ではなくフィードバック電子回路で制限されます。SQUIDはヌル検出器になり、$V_\Phi$ は校正ではなくループ利得になります。それでも感度のすべてはやはり $V_\Phi$ で決まります。増幅器の電圧ノイズを等価磁束ノイズに換算するのがそれだからです。

Code Example 2: RSJ方程式によるV-$\Phi$ 特性

"""第3章 Code Example 2: RSJ方程式から見るdc SQUID。
Code Example 1 の続き(同一セッション)。"""

from scipy.integrate import solve_ivp

# 対称なdc SQUIDの無次元RSJ方程式です。時間の単位は
# t_c = Phi_0 / (2 pi I_0 R)、電流は I_0、電圧は I_0 R を単位とします。
#   beta_c phi_k'' + phi_k' + sin phi_k = i_b/2 +- j
#   j = [(phi_2 - phi_1) - 2 pi phi_e] / (pi beta_L)
#   v = (phi_1' + phi_2') / 2
# beta_c = 0(抵抗シャント、非ヒステリシス)とすればこれは1階の連立2式になり、
# 実用的な磁力計はすべてこの領域で動作します。


def rsj_rhs(t, y, i_b, phi_e, beta_L):
    p1, p2 = y
    j = ((p2 - p1) - 2 * np.pi * phi_e) / (np.pi * beta_L)
    return [i_b / 2 + j - np.sin(p1), i_b / 2 - j - np.sin(p2)]


def v_mean(i_b, phi_e, beta_L, t_settle=300.0, t_avg=2000.0):
    """時間平均電圧を、正味の位相前進から求めます(標本化誤差が入りません)。"""
    s = solve_ivp(rsj_rhs, (0.0, t_settle), [0.0, 2 * np.pi * phi_e],
                  args=(i_b, phi_e, beta_L), rtol=1e-9, atol=1e-11,
                  method="LSODA")
    y0 = s.y[:, -1]
    s2 = solve_ivp(rsj_rhs, (0.0, t_avg), y0, args=(i_b, phi_e, beta_L),
                   rtol=1e-9, atol=1e-11, method="LSODA")
    return ((s2.y[0, -1] + s2.y[1, -1]) - (y0[0] + y0[1])) / (2 * t_avg)


def i_critical(phi_e, beta_L, tol=1e-4):
    """静的な解が存在する最大のバイアス電流を、vについての二分法で求めます。"""
    lo, hi = 0.0, 2.0
    for _ in range(24):
        mid = 0.5 * (lo + hi)
        if abs(v_mean(mid, phi_e, beta_L, 200.0, 400.0)) < tol:
            lo = mid
        else:
            hi = mid
    return 0.5 * (lo + hi)


print("遮蔽を含めたdc SQUIDの臨界電流の磁束依存性")
print(f"{'Phi/Phi_0':>11}" + "".join(f"{'bL=' + f'{b:.1f}':>12}"
                                     for b in (0.2, 0.5, 1.0, 2.0))
      + f"{'2|cos|':>10}")
print("-" * 69)
for pe in (0.0, 0.125, 0.25, 0.375, 0.5):
    row = "".join(f"{i_critical(pe, b):>12.5f}" for b in (0.2, 0.5, 1.0, 2.0))
    print(f"{pe:>11.3f}{row}{2*abs(np.cos(np.pi*pe)):>10.5f}")
print("  遮蔽が最小値をゼロから持ち上げます。ループは循環電流 Phi_0/2L なしに")
print("  半磁束量子を排除できず、その電流は接合が運べる分から差し引かれます。")

# --- V-Phi特性 --------------------------------------------------------------
i_b = 2.1
pes = np.linspace(0.0, 1.0, 41)
print(f"\ni_b = {i_b:.2f} におけるV-Phi特性(どの beta_L でも i_c(0) = 2)")
print(f"{'beta_L':>8}{'v_min':>10}{'v_max':>10}{'Delta v':>10}"
      f"{'max |dv/d(Phi/Phi_0)|':>23}{'V_Phi/(R/L)':>13}")
print("-" * 74)
curves = {}
for bL in (0.2, 0.5, 1.0, 2.0, 5.0):
    v = np.array([v_mean(i_b, pe, bL) for pe in pes])
    curves[bL] = v
    slope = np.abs(np.gradient(v, pes)).max()
    print(f"{bL:>8.1f}{v.min():>10.5f}{v.max():>10.5f}{v.max()-v.min():>10.5f}"
          f"{slope:>23.5f}{slope*bL/2:>13.5f}")
print("  V_Phi = (dv/d(Phi/Phi_0)) I_0 R / Phi_0、R/L = 2 I_0 R/(beta_L Phi_0)")
print("  なので比は (dv/dphi_e) beta_L / 2 です。beta_L = 1 で 0.72、beta_L = 2")
print("  付近で1を通ります。V_Phi が R/L 程度という目安は正しいわけです。")
print("  また Delta v は beta_L とともに単調に減り、比は増えます。beta_L が1付近")
print("  であることは妥協であって、どちらかの最適点ではありません。")

# --- 具体的な素子 -----------------------------------------------------------
I0, R, T_op = 5e-6, 4.0, 4.2
for bL in (0.5, 1.0, 2.0):
    L = bL * PHI0 / (2 * I0)
    slope = np.abs(np.gradient(curves[bL], pes)).max()
    V_phi = slope * I0 * R / PHI0
    print(f"\n  beta_L = {bL:.1f}: L = {L*1e12:6.2f} pH、I_0 R = "
          f"{I0*R*1e6:.1f} uV、R/L = {R/L*PHI0*1e6:.2f} uV/Phi_0")
    print(f"    V_Phi = {V_phi*PHI0*1e6:.3f} uV/Phi_0 = "
          f"{V_phi*PHI0*1e9*1e-3:.4f} nV/mPhi_0")
    print(f"    v = {curves[bL].max():.3f} におけるジョセフソン周波数: "
          f"{curves[bL].max()*I0*R*2*E/H/1e9:.3f} GHz")

# --- シャントを入れる理由 ---------------------------------------------------
print("\nI-V特性がヒステリシスをもつかはStewart-McCumberパラメータが決めます:")
print(f"{'I_0':>9}{'R':>9}{'C':>9}{'beta_c':>10}{'R for beta_c = 1':>19}")
print("-" * 56)
for I0_, R_, C_ in [(5e-6, 4.0, 1e-12), (5e-6, 40.0, 1e-12),
                    (20e-6, 4.0, 1e-12), (5e-6, 4.0, 0.05e-12)]:
    bc = 2 * np.pi * I0_ * R_**2 * C_ / PHI0
    R_crit = np.sqrt(PHI0 / (2 * np.pi * I0_ * C_))
    print(f"{I0_*1e6:>7.0f} uA{R_:>7.0f} Oh{C_*1e12:>7.2f} pF{bc:>10.4f}"
          f"{R_crit:>16.3f} Ohm")
print("  シャントのないトンネル接合は beta_c が1をはるかに超えるのでI-Vはヒステ")
print("  リシスをもち、連続的な磁束電圧変換素子として使えません。外部抵抗を足す")
print("  のは意図的に散逸を足す行為であり、次の例が示すようにノイズも足します。")
遮蔽を含めたdc SQUIDの臨界電流の磁束依存性
  Phi/Phi_0      bL=0.2      bL=0.5      bL=1.0      bL=2.0    2|cos|
---------------------------------------------------------------------
      0.000     2.00000     2.00000     2.00000     2.00000   2.00000
      0.125     1.85005     1.85920     1.87805     1.90691   1.84776
      0.250     1.44364     1.52630     1.63442     1.75040   1.41421
      0.375     0.88346     1.10985     1.34905     1.57597   0.76537
      0.500     0.30467     0.67208     1.04725     1.39313   0.00000
  遮蔽が最小値をゼロから持ち上げます。ループは循環電流 Phi_0/2L なしに
  半磁束量子を排除できず、その電流は接合が運べる分から差し引かれます。

i_b = 2.10 におけるV-Phi特性(どの beta_L でも i_c(0) = 2)
  beta_L     v_min     v_max   Delta v  max |dv/d(Phi/Phi_0)|  V_Phi/(R/L)
--------------------------------------------------------------------------
     0.2   0.32037   0.99836   0.67799                2.18282      0.21828
     0.5   0.32037   0.87002   0.54965                1.87258      0.46814
     1.0   0.32037   0.72630   0.40593                1.43865      0.71933
     2.0   0.32037   0.58636   0.26598                0.96286      0.96286
     5.0   0.32037   0.44412   0.12375                0.43821      1.09554
  V_Phi = (dv/d(Phi/Phi_0)) I_0 R / Phi_0、R/L = 2 I_0 R/(beta_L Phi_0)
  なので比は (dv/dphi_e) beta_L / 2 です。beta_L = 1 で 0.72、beta_L = 2
  付近で1を通ります。V_Phi が R/L 程度という目安は正しいわけです。
  また Delta v は beta_L とともに単調に減り、比は増えます。beta_L が1付近
  であることは妥協であって、どちらかの最適点ではありません。

  beta_L = 0.5: L = 103.39 pH、I_0 R = 20.0 uV、R/L = 80.00 uV/Phi_0
    V_Phi = 37.452 uV/Phi_0 = 37.4516 nV/mPhi_0
    v = 0.870 におけるジョセフソン周波数: 8.415 GHz

  beta_L = 1.0: L = 206.78 pH、I_0 R = 20.0 uV、R/L = 40.00 uV/Phi_0
    V_Phi = 28.773 uV/Phi_0 = 28.7731 nV/mPhi_0
    v = 0.726 におけるジョセフソン周波数: 7.025 GHz

  beta_L = 2.0: L = 413.57 pH、I_0 R = 20.0 uV、R/L = 20.00 uV/Phi_0
    V_Phi = 19.257 uV/Phi_0 = 19.2572 nV/mPhi_0
    v = 0.586 におけるジョセフソン周波数: 5.671 GHz

I-V特性がヒステリシスをもつかはStewart-McCumberパラメータが決めます:
      I_0        R        C    beta_c   R for beta_c = 1
--------------------------------------------------------
      5 uA      4 Oh   1.00 pF    0.2431           8.113 Ohm
      5 uA     40 Oh   1.00 pF   24.3083           8.113 Ohm
     20 uA      4 Oh   1.00 pF    0.9723           4.057 Ohm
      5 uA      4 Oh   0.05 pF    0.0122          36.283 Ohm
  シャントのないトンネル接合は beta_c が1をはるかに超えるのでI-Vはヒステ
  リシスをもち、連続的な磁束電圧変換素子として使えません。外部抵抗を足す
  のは意図的に散逸を足す行為であり、次の例が示すようにノイズも足します。

注目すべき点。 臨界電流の表が干渉パターンの誠実な版です。ゼロ磁束ではどの $\beta_L$ でも $I_c = 2I_0$ です。対称解が循環電流を必要としないからです。半整数磁束では理想パターンはゼロと言い、実素子はそうではないと言います。$\beta_L = 0.2$ で0.305、$\beta_L = 1$ で1.047、$\beta_L = 2$ で1.393です。変調の深さが信号を運ぶので遮蔽は直接の損失であり、これらの数値は漸近式ではなくRSJ方程式を二分法で解いて得たものです。演習2で静的な計算から再現してもらいます。積分器に対する独立な検査になります。

V-$\Phi$ の表は $\beta_L$ を決めるトレードオフを示します。電圧変調 $\Delta v$ は $\beta_L$ とともに単調に減り、$\beta_L = 0.2$ の0.678から $\beta_L = 5$ の0.124へ落ちます。ここでも遮蔽です。しかし $R/L$ で測った物理的な伝達関数は逆方向に動き、0.22から1.10へ増えます。$R/L$ 自身が $\beta_L$ とともに落ちるからです。比は $\beta_L = 1$ で0.72、$\beta_L = 2$ 付近で1を通ります。したがって $V_\Phi \sim R/L$ は正しい目安であり、$\beta_L \approx 1$ は逆方向に動く2つの量の妥協であってどちらかの最適点ではありません。完全な最適化にはランジュヴァンのノイズ項が必要であり、第3.3節はそれを導出せず取り込みます。

具体的な素子のブロックが数値を与えます。$I_0 = 5\ \mu$A、$R = 4\ \Omega$、$\beta_L = 1$ でループインダクタンスは207 pH、$I_0R = 20\ \mu$V、$V_\Phi = 29\ \mu$V/$\Phi_0$ です。すなわちミリ磁束量子あたり約29 nVなので、入力ノイズが数 nV/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$ の室温増幅器はすでに有意な寄与者です。動作点でのジョセフソン振動は7 GHzで走り、SQUIDのマイクロ波環境が問題になる理由であり、その帯域が接合ではなく読み出し回路で決まる理由です。

最後の表がシャントの存在理由です。$R = 40\ \Omega$、$C = 1$ pF のシャントなしトンネル接合は $\beta_c = 24$ で深くヒステリシスをもちます。$I_0 = 5\ \mu$A、1 pFで $\beta_c = 1$ に達するには $R \le 8.1\ \Omega$ が必要です。この制約は $\beta_L \approx 1$ と併せて、$L$ と $C$ を選べば $R$ と $I_0$ の両方を固定します。次節のエネルギー分解能が $L$ と $C$ だけの関数になるのはそのためです。


3.3 感度を制限するもの

白色ノイズ: シャントの代価

第3.2節のRSJ方程式は決定論的なのでノイズ床をもちません。各シャントのジョンソン電流ノイズ $S_I = 4k_BT/R$ を加えるとランジュヴァン方程式になり、その数値解がdc SQUIDの古典的解析です。その中心的な結果は、$\beta_L = 1$ と最適バイアスにおいて電圧ノイズ

$$ S_V \approx 16\, k_B T R $$

です。本章はこの係数を導出せず取り込みます。その導出は代数の1ステップではなく確率シミュレーションだからです。以降はすべて代数です。電圧ノイズを伝達関数を通じて磁束に換算し、$V_\Phi = R/L$ を使うと

$$ S_\Phi = \frac{S_V}{V_\Phi^2} = \frac{16\,k_B T L^2}{R} $$

です。

エネルギー分解能

自然な性能指標はループに依存する磁束ノイズではなくエネルギー分解能

$$ \epsilon = \frac{S_\Phi}{2L} $$

です。これは素子が分解できない単位帯域あたりのエネルギーであり、そこに結合されるあらゆる磁束トランスの性能を決める量です。上の式から $\epsilon = 8k_BTL/R$ となります。ここで第3.2節の2つの設計制約を閉じます。$\beta_L = 1$ は $I_0 = \Phi_0/2L$ を与え、$\beta_c = 1$ は $R = \sqrt{\Phi_0/(2\pi I_0 C)} = \sqrt{L/(\pi C)}$ を与えます。代入すると

$$ \boxed{\ \epsilon = 8\sqrt{\pi}\;k_B T \sqrt{LC} \approx 14.2\, k_B T\sqrt{LC}\ } $$

です。この結果について2点じっくり見る価値があります。自由パラメータを含みません。2つの制約によって抵抗と臨界電流が消去されたので、最適化されたdc SQUIDのエネルギー分解能はインダクタンス、容量、温度だけで決まります。そして $\sqrt{LC}$ は時間の次元をもち、$\beta_L = 1$ を課したもとでは $\sqrt{\pi}$ の因子を除いて接合のプラズマ周波数の逆数です。$\beta_L = 1$ はジョセフソンインダクタンスを $L_J = \Phi_0/2\pi I_0 = L/\pi$ とするので $\omega_p^{-1} = \sqrt{L_JC} = \sqrt{LC/\pi}$ となります。その因子を除いてこの式は「エネルギー分解能は熱エネルギー×素子の応答時間」と読めます。揺動散逸の議論が予言するとおりです。

数値的には100 pH、1 pFの素子で $\sqrt{LC} \approx 10^{-11}$ s なので、4.2 Kで $\epsilon \approx 78\hbar$、0.3 Kで $\approx 6\hbar$ です。さらに低温へ外挿すると式は $\epsilon < \hbar$ を返しますが、これは古典的なランジュヴァン的取り扱いを自身の妥当範囲の外まで押し込んだ兆候です。真の限界は $\hbar$ 程度であり、そこに達するにはより良い抵抗ではなく姉妹コースの量子限界増幅器が必要です。

Code Example 3: ジョンソンノイズからエネルギー分解能へ

"""第3章 Code Example 3: ジョンソンノイズからエネルギー分解能へ。
Code Example 2 の続き(同一セッション)。"""

# Code Example 2 の決定論的なRSJ方程式にはノイズが入っていません。2つのシャント
# のジョンソン電流ノイズ S_I = 4 k_B T / R を各々加え、得られるランジュヴァン
# 方程式を解くのがTesche-Clarkeの計算です。その結果、beta_L = 1 と最適バイアス
# のもとで得られる次の1つの数値だけを本節は取り込みます。
#   S_V = 16 k_B T R
# 以下はすべてそこからの代数計算です。


def noise_chain(L, C, T, V_phi=None):
    """最適化されたdc SQUIDの白色磁束ノイズとエネルギー分解能です。

    beta_L = 1 が I_0 = Phi_0 / 2L を固定し、beta_c = 1 が
    R = sqrt(L / (pi C)) を固定します。
    """
    I0 = PHI0 / (2.0 * L)
    R = np.sqrt(L / (np.pi * C))
    S_V = 16.0 * KB * T * R
    if V_phi is None:
        V_phi = R / L
    S_Phi = S_V / V_phi**2
    return dict(I0=I0, R=R, V_phi=V_phi, S_V=S_V, S_Phi=S_Phi,
                eps=S_Phi / (2.0 * L))


print("シャントのジョンソンノイズを磁束とエネルギーに換算する")
print("  S_V = 16 kB T R、S_Phi = S_V / V_Phi^2、epsilon = S_Phi / 2L")
print("  V_Phi = R/L、beta_L = 1、beta_c = 1 とすればこれは次に帰着します")
print("  epsilon = 8 kB T L / R = 8 sqrt(pi) kB T sqrt(L C)")
print(f"  係数は 8 sqrt(pi) = {8*np.sqrt(np.pi):.5f} です")

print(f"\n{'L (pH)':>8}{'C (pF)':>8}{'T (K)':>7}{'I_0 (uA)':>10}{'R (ohm)':>9}"
      f"{'V_Phi (uV/Phi_0)':>18}{'sqrt(S_V)':>15}{'sqrt(S_Phi)':>18}"
      f"{'eps/hbar':>11}")
print("-" * 104)
for L, C, T in [(100e-12, 1e-12, 4.2), (100e-12, 1e-12, 0.3),
                (100e-12, 1e-12, 0.05), (20e-12, 1e-12, 4.2),
                (500e-12, 1e-12, 4.2), (100e-12, 0.1e-12, 4.2)]:
    d = noise_chain(L, C, T)
    ana = 8 * np.sqrt(np.pi) * KB * T * np.sqrt(L * C)
    assert abs(d["eps"] / ana - 1) < 1e-12
    print(f"{L*1e12:>8.0f}{C*1e12:>8.2f}{T:>7.2f}{d['I0']*1e6:>10.3f}"
          f"{d['R']:>9.3f}{d['V_phi']*PHI0*1e6:>18.2f}"
          f"{np.sqrt(d['S_V'])*1e12:>12.3f} pV{np.sqrt(d['S_Phi'])/PHI0*1e6:>13.4f} uPhi0"
          f"{d['eps']/HBAR:>11.3f}")
print("  最後の列はエネルギー分解能を hbar 単位で表したものです。4.2 K では")
print("  100 pH のSQUIDが 80 hbar 付近にあり、0.3 K まで冷やすと 6 hbar に")
print("  なります。0.05 K の行は hbar を下回りますが、これは古典的なランジュヴァン")
print("  的取り扱いを自身の妥当範囲の外まで押し込んだことの兆候です。")

# --- Code Example 2 で実際に計算した伝達関数を使う --------------------------
print("\nV_Phi に R/L ではなくRSJシミュレーションの値を使った場合:")
L, C, T = 100e-12, 1e-12, 4.2
I0 = PHI0 / (2 * L)
R = np.sqrt(L / (np.pi * C))
print(f"  L = {L*1e12:.0f} pH、C = {C*1e12:.1f} pF、T = {T:.1f} K -> "
      f"I_0 = {I0*1e6:.3f} uA、R = {R:.3f} ohm")
slope = np.abs(np.gradient(curves[1.0], pes)).max()
for label, V_phi in [("R / L", R / L),
                     ("RSJ, beta_L = 1", slope * I0 * R / PHI0)]:
    d = noise_chain(L, C, T, V_phi)
    print(f"  {label:<18} V_Phi = {V_phi*PHI0*1e6:7.2f} uV/Phi_0   "
          f"sqrt(S_Phi) = {np.sqrt(d['S_Phi'])/PHI0*1e6:6.3f} uPhi0/rtHz   "
          f"eps = {d['eps']/HBAR:6.2f} hbar")
print("  beta_L = 1 でシミュレーションの伝達関数は R/L より28%小さいので、磁束")
print("  ノイズの振幅は39%大きく、エネルギー分解能は93%悪化します。動くのは")
print("  前係数だけです。")

# --- それは磁場感度として何を意味するか -------------------------------------
def loop_inductance(r, a):
    """線半径 a の導線で作った半径 r の円形ループの自己インダクタンスです。"""
    return MU0 * r * (np.log(8.0 * r / a) - 2.0)


print("\n裸のループについて磁束ノイズから磁場ノイズへ、T = 4.2 K、C = 1 pF:")
print(f"{'r (um)':>8}{'L (pH)':>9}{'A (m^2)':>12}{'I_0 (uA)':>10}"
      f"{'sqrt(S_Phi)':>16}{'sqrt(S_B)':>17}")
print("-" * 74)
for r_um in (5.0, 25.0, 100.0, 500.0):
    r = r_um * 1e-6
    L = loop_inductance(r, 1e-6)
    d = noise_chain(L, 1e-12, 4.2)
    A = np.pi * r**2
    print(f"{r_um:>8.1f}{L*1e12:>9.2f}{A:>12.3e}{d['I0']*1e6:>10.2f}"
          f"{np.sqrt(d['S_Phi'])/PHI0*1e6:>11.4f} uPhi0"
          f"{np.sqrt(d['S_Phi'])/A*1e15:>12.3f} fT/rtHz")
rr = np.array([5.0, 25.0, 100.0, 500.0]) * 1e-6
sb = np.array([np.sqrt(noise_chain(loop_inductance(r, 1e-6), 1e-12, 4.2)["S_Phi"])
               / (np.pi * r**2) for r in rr])
print(f"  sqrt(S_B) の r に対するフィット指数 : "
      f"{np.polyfit(np.log(rr), np.log(sb), 1)[0]:.4f}")
print("  代数: eps は sqrt(L C) で増えるので S_Phi = 2 L eps は L^(3/2) で増え、")
print("  sqrt(S_Phi) は L^(3/4) で増えます。面積は r^2 で増えるので r^(-5/4) と")
print("  なり、L(r) の対数がこれを r^(-1) 程度に緩めます。いずれにせよループを")
print("  大きくすると磁場感度は良くなり空間分解能は悪くなります。第1章1.5節の")
print("  トレードオフ地図を、1つの素子系列について書いたものです。")
シャントのジョンソンノイズを磁束とエネルギーに換算する
  S_V = 16 kB T R、S_Phi = S_V / V_Phi^2、epsilon = S_Phi / 2L
  V_Phi = R/L、beta_L = 1、beta_c = 1 とすればこれは次に帰着します
  epsilon = 8 kB T L / R = 8 sqrt(pi) kB T sqrt(L C)
  係数は 8 sqrt(pi) = 14.17963 です

  L (pH)  C (pF)  T (K)  I_0 (uA)  R (ohm)  V_Phi (uV/Phi_0)      sqrt(S_V)       sqrt(S_Phi)   eps/hbar
--------------------------------------------------------------------------------------------------------
     100    1.00   4.20    10.339    5.642            116.67      72.350 pV       0.6202 uPhi0     77.969
     100    1.00   0.30    10.339    5.642            116.67      19.336 pV       0.1657 uPhi0      5.569
     100    1.00   0.05    10.339    5.642            116.67       7.894 pV       0.0677 uPhi0      0.928
      20    1.00   4.20    51.696    2.523            260.87      48.383 pV       0.1855 uPhi0     34.869
     500    1.00   4.20     2.068   12.616             52.17     108.189 pV       2.0736 uPhi0    174.344
     100    0.10   4.20    10.339   17.841            368.93     128.659 pV       0.3487 uPhi0     24.656
  最後の列はエネルギー分解能を hbar 単位で表したものです。4.2 K では
  100 pH のSQUIDが 80 hbar 付近にあり、0.3 K まで冷やすと 6 hbar に
  なります。0.05 K の行は hbar を下回りますが、これは古典的なランジュヴァン
  的取り扱いを自身の妥当範囲の外まで押し込んだことの兆候です。

V_Phi に R/L ではなくRSJシミュレーションの値を使った場合:
  L = 100 pH、C = 1.0 pF、T = 4.2 K -> I_0 = 10.339 uA、R = 5.642 ohm
  R / L              V_Phi =  116.67 uV/Phi_0   sqrt(S_Phi) =  0.620 uPhi0/rtHz   eps =  77.97 hbar
  RSJ, beta_L = 1    V_Phi =   83.92 uV/Phi_0   sqrt(S_Phi) =  0.862 uPhi0/rtHz   eps = 150.68 hbar
  beta_L = 1 でシミュレーションの伝達関数は R/L より28%小さいので、磁束
  ノイズの振幅は39%大きく、エネルギー分解能は93%悪化します。動くのは
  前係数だけです。

裸のループについて磁束ノイズから磁場ノイズへ、T = 4.2 K、C = 1 pF:
  r (um)   L (pH)     A (m^2)  I_0 (uA)     sqrt(S_Phi)        sqrt(S_B)
--------------------------------------------------------------------------
     5.0    10.61   7.854e-11     97.43     0.1153 uPhi0    3035.692 fT/rtHz
    25.0   103.62   1.963e-09      9.98     0.6369 uPhi0     670.758 fT/rtHz
   100.0   588.69   3.142e-08      1.76     2.3437 uPhi0     154.268 fT/rtHz
   500.0  3954.67   7.854e-07      0.26     9.7798 uPhi0      25.749 fT/rtHz
  sqrt(S_B) の r に対するフィット指数 : -1.0378
  代数: eps は sqrt(L C) で増えるので S_Phi = 2 L eps は L^(3/2) で増え、
  sqrt(S_Phi) は L^(3/4) で増えます。面積は r^2 で増えるので r^(-5/4) と
  なり、L(r) の対数がこれを r^(-1) 程度に緩めます。いずれにせよループを
  大きくすると磁場感度は良くなり空間分解能は悪くなります。第1章1.5節の
  トレードオフ地図を、1つの素子系列について書いたものです。

注目すべき点。 主要な表が設計空間です。4.2 Kの100 pH、1 pF SQUIDは両方の制約を満たすのに $I_0 = 10.3\ \mu$A と $R = 5.64\ \Omega$ を要し、$V_\Phi = 117\ \mu$V/$\Phi_0$ を与え、電圧ノイズ72 pV/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$、磁束ノイズ0.62 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$、エネルギー分解能78 $\hbar$ に着地します。どれもそのサイズの素子として現実的な値であり、どれもフィットしていません。

温度の列を下に読むと、$\epsilon$ の改善は $T$ に線形なので磁束ノイズについては $\sqrt{T}$ にすぎません。4.2 Kから0.3 Kへの冷却はエネルギー分解能で14倍を買いますが $\sqrt{S_\Phi}$ では3.7倍です。幾何の行を下に読むと、小さいループは磁束では静かですが面積が小さく、それが最後の表が明示するトレードオフです。容量を下げることも効き、それは直接ではなく $\beta_c$ の制約を通じて効きます。小さい $C$ が大きい $R$ を許し、大きい $R$ はジョンソン電流ノイズが小さいのです。

シミュレーションの伝達関数との比較が内部整合性の検査です。目安の $R/L$ ではなく Code Example 2 で $\beta_L = 1$ について実際に計算した $V_\Phi$ を代入すると、磁束ノイズの振幅は39%増え $\epsilon$ は93%悪化します。スケーリング則はそのまま残り、動くのは前係数だけです。エネルギー分解能で2倍というのは、目安とシミュレーションの間で予想すべき不一致の大きさそのものです。

最後の表は第1章の分解能対感度のトレードオフを1つの素子系列について書いたものです。ループが大きくなると磁束ノイズは $L^{3/4}$ でしか増えないのに面積は $r^2$ で増えるので磁場ノイズは落ちます。代数からは $r^{-5/4}$ で、$L(r)$ の対数がそれを $r^{-1}$ 程度に緩めます。そして空間分解能は $r$ で劣化します。5 $\mu$m から500 $\mu$m のループへ移ると磁場感度が2桁得られ分解能が2桁失われます。両方に勝つ設計はなく、その直線上のどこに座るかを選ぶことがあらゆる走査SQUID実験の最初の決定です。

$1/f$ ノイズ、そしてそれが量子ビットと共有する材料問題

前節の白色ノイズは低周波でSQUIDを制限するものではありません。典型的には0.1 Hzから数ヘルツの間にあるクロスオーバーより下では、測定されたあらゆるdc SQUIDが $1/f$ に近いスペクトルの過剰ノイズを示し、その1 Hzにおける振幅は、多くの材料、多くの作製経路にわたって $1\ \mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ の1桁以内に収まります。どのサイズでも文字どおり同じ値というわけではありません。Code Example 4 の前方モデルは10、100、1000 $\mu$m のループに対して1.18、3.71、11.7 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ を与え、ループ辺長の2桁に対して1桁の広がりです。そしてこの比こそが要点です。ループ面積でスケールする機構なら、同じ範囲で4桁広がっていたはずです。したがって際立った事実は普遍的な値ではなくサイズ依存性の弱さであり、手がかりになるのもその弱さです。

2つの機構が確立されており、どちらもアモルファス酸化物の問題です。

不対な表面スピン。 超伝導膜は1平方メートルあたり $10^{16}$ から $10^{17}$ 個程度の不対電子スピン — ダングリングボンド、吸着酸素、自然酸化膜中の欠陥 — を表面に持ち、それぞれがランダムに反転して小さな磁束をループに結合します。その痕跡はスケーリングに現れます。スピンが導線の表面に住むので分散は面積ではなく周長とともに増え、磁束ノイズはループサイズに弱く依存するだけになります。バルク機構なら面積とともにスケールし、測定が1桁以内で変わるところを2桁変わるはずです。Code Example 4 が順問題モデルを組み立て、指数を検査します。

臨界電流のゆらぎ。 トンネルバリア内部の2準位欠陥が接合の透過率を変調するので、$I_0$ は $1/f$ スペクトルで、1 Hzで毎ルートヘルツ $10^{-6}$ から $10^{-5}$ 程度の相対振幅でゆらぎます。SQUIDでは2つの接合間の非対称が効きます。循環電流を生み、したがって見かけの磁束 $\approx L\,\delta I_0/2$ を生むからです。Code Example 4 はこれが表面スピンと同じマイクロ磁束量子のスケールに落ちることを示します。

姉妹コースとの繋がりはこれで直接的になり、両方向で述べる価値があります。

SQUID磁力計では 超伝導量子ビットでは
表面スピン、1 Hzで $S_\Phi \sim 1\ \mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ 約1 Hz以下の $1/f$ ノイズ床 磁束量子ビットの位相緩和。感度最大のバイアスで数十nsの $T_2^\ast$
バリアの2準位欠陥、$\delta I_0/I_0 \sim 10^{-5}$ 見かけの磁束ドリフト $L\delta I_0/2$ トランズモン周波数の遅いドリフト。再校正の頻度
同じ酸化物中の誘電損失 二次的な重要性 トランズモン $T_1$ の支配的な限界
非平衡準粒子 過剰な $I_0$ ノイズ、時折のスイッチング $T_1$ イベント、相関誤差

中央の列と右の列を同じウェハ上の2つの実験として読んでください。実際そうなのです。表面スピン密度を半分にするプロセス変更は磁力計の低周波ノイズと磁束量子ビットのコヒーレンスを同じ倍率で改善し、磁力計のほうが圧倒的に安い測定です。これは実在するが十分に活用されていない経路です。SQUIDは量子ビット材料の診断装置であり、しかも4 Kで午後のうちに走るものなのです。

Code Example 4: 表面スピンと、量子ビットが見る同じノイズ

import numpy as np

H = 6.62607015e-34
HBAR = H / (2 * np.pi)
E = 1.602176634e-19
KB = 1.380649e-23
PHI0 = H / (2 * E)
MU0 = 4 * np.pi * 1e-7
MU_B = 9.2740100783e-24


def flux_noise_surface_spins(sigma_s, perimeter, width, decades=10.0,
                             moment=MU_B):
    """不対な表面スピンによる 1/f 磁束ノイズの桁数レベルの見積りです。

    幅 w の導線表面に載った1個のスピンは phi_1 = mu_0 mu / (2 w) 程度の磁束を
    結合します。スピンは無相関なので分散は N phi_1^2 であり、
    N = sigma_s x 2 x perimeter x width です。切替速度が対数一様に分布すると
    その分散は指定した桁数にわたって 1/f として広がります。
    """
    phi_1 = MU0 * moment / (2.0 * width)
    n_spins = sigma_s * 2.0 * perimeter * width
    var = n_spins * phi_1**2
    return var, var / (decades * np.log(10.0))       # 分散、1 Hz での S_Phi


print("不対な表面スピンによる 1/f 磁束ノイズ(桁数レベル)")
print("  導線表面の1個のスピンは mu_0 mu_B / 2w の磁束を結合します:")
for w_um in (0.1, 1.0, 10.0):
    print(f"    w = {w_um:5.2f} um -> phi_1 = "
          f"{MU0*MU_B/(2*w_um*1e-6)/PHI0*1e6:.4f} uPhi_0")

print(f"\n{'loop side':>11}{'wire w':>9}{'N spins':>12}{'rms dPhi':>15}"
      f"{'sqrt(S_Phi(1 Hz))':>21}")
print("-" * 68)
sigma_s = 5e16                       # 1 nm^2 あたり 0.05 個の不対スピン
for side_um, w_um in [(10.0, 1.0), (100.0, 1.0), (1000.0, 1.0),
                      (10.0, 0.1), (10.0, 10.0)]:
    P, w = 4 * side_um * 1e-6, w_um * 1e-6
    var, S1 = flux_noise_surface_spins(sigma_s, P, w)
    print(f"{side_um:>8.0f} um{w_um:>7.1f} um{var/(MU0*MU_B/(2*w))**2:>12.3e}"
          f"{np.sqrt(var)/PHI0*1e6:>10.3f} uPhi_0"
          f"{np.sqrt(S1)/PHI0*1e6:>14.3f} uPhi_0")
print(f"  ここで当てはめた数は面密度ただ1つ、sigma_s = {sigma_s:.0e} 1/m^2、")
print("  すなわち1平方ナノメートルあたり0.05個で、文献が推定する値と1桁以内で")
print("  一致します。当てはめずに得られるのはスケールとサイズ依存性の弱さです。")
print("  ループの1辺が2桁変わっても磁束ノイズは1桁しか変わりません。効くのは")
print("  周長だけで、しかも平方根の下に入るからです。バルク機構なら面積に比例し")
print("  2桁変わるはずです。測定されるマイクロ磁束量子がほぼ普遍的であることは、")
print("  したがって表面機構の証拠です。")
print("  同時にこれは、Code Example 3 の白色ノイズが小さい大きなループでは 1/f")
print("  磁束ノイズが誤差予算を支配することを意味します。")

# --- 同じノイズを磁束量子ビットが見ると ------------------------------------
print("\n同じ S_Phi を、感度が最大となるバイアス点の磁束量子ビットに持ち込む:")
print("  dE/dPhi = 2 I_p なので df/dPhi = 2 I_p / h")
print(f"{'I_p (nA)':>10}{'df/dPhi (GHz/mPhi_0)':>23}{'sigma_Phi (uPhi_0)':>20}"
      f"{'sigma_f (MHz)':>15}{'T2* (ns)':>11}")
print("-" * 79)
S1_ref = (1.0e-6 * PHI0) ** 2        # 1 Hz で 1 uPhi_0/sqrt(Hz)
f_lo, f_hi = 1e-2, 1e6
sigma_Phi = np.sqrt(S1_ref * np.log(f_hi / f_lo))
for Ip_nA in (10.0, 100.0, 300.0):
    dfdPhi = 2.0 * Ip_nA * 1e-9 / H                  # Hz / Wb
    sigma_f = dfdPhi * sigma_Phi
    T2s = np.sqrt(2.0) / (2 * np.pi * sigma_f)
    print(f"{Ip_nA:>10.0f}{dfdPhi*PHI0*1e-3/1e9:>23.4f}"
          f"{sigma_Phi/PHI0*1e6:>20.4f}{sigma_f/1e6:>15.4f}{T2s*1e9:>11.2f}")
print(f"  sigma_Phi は S_Phi を {f_lo:.0e} Hz から {f_hi:.0e} Hz まで積分した"
      f"もので、ln = {np.log(f_hi/f_lo):.3f} です。")
print("  磁束感度が最大になるようにバイアスした磁束量子ビットは、1 Hz でSQUIDを")
print("  制限するのと同じ欠陥集団によって数十ナノ秒で位相を失います。センサと")
print("  量子ビットは同じ材料を読んでいるのです。")

# --- 臨界電流ノイズ: トランズモンの問題が、SQUIDに現れる --------------------
print("\nバリア中の2準位欠陥による臨界電流の 1/f ノイズ:")
print("  接合間の非対称 dI_0 は L dI_0 / 2 の磁束のように見えます")
print(f"{'I_0 (uA)':>10}{'dI_0/I_0 at 1 Hz':>19}{'dI_0 (pA)':>12}{'L (pH)':>9}"
      f"{'apparent flux':>19}")
print("-" * 69)
for I0_uA, frac, L_pH in [(5.0, 1e-5, 200.0), (5.0, 1e-6, 200.0),
                          (20.0, 1e-5, 200.0), (5.0, 1e-5, 20.0)]:
    dI = frac * I0_uA * 1e-6
    dPhi = L_pH * 1e-12 * dI / 2.0
    print(f"{I0_uA:>10.1f}{frac:>19.1e}{dI*1e12:>12.4f}{L_pH:>9.0f}"
          f"{dPhi/PHI0*1e6:>13.4f} uPhi_0")
print("  どちらの機構もマイクロ磁束量子のスケールに落ち、どちらもアモルファス")
print("  酸化物の問題です。表面の不対スピンと、トンネルバリア中の2準位欠陥です。")
print("  量子ハードウェア入門の第2章は、同じ2つの欠陥集団をトランズモンの T1 と")
print("  磁束量子ビットの T2 の限界として挙げています。一方の改善は他方の改善です。")
不対な表面スピンによる 1/f 磁束ノイズ(桁数レベル)
  導線表面の1個のスピンは mu_0 mu_B / 2w の磁束を結合します:
    w =  0.10 um -> phi_1 = 0.0282 uPhi_0
    w =  1.00 um -> phi_1 = 0.0028 uPhi_0
    w = 10.00 um -> phi_1 = 0.0003 uPhi_0

  loop side   wire w     N spins       rms dPhi    sqrt(S_Phi(1 Hz))
--------------------------------------------------------------------
      10 um    1.0 um   4.000e+06     5.636 uPhi_0         1.175 uPhi_0
     100 um    1.0 um   4.000e+07    17.822 uPhi_0         3.714 uPhi_0
    1000 um    1.0 um   4.000e+08    56.359 uPhi_0        11.745 uPhi_0
      10 um    0.1 um   4.000e+05    17.822 uPhi_0         3.714 uPhi_0
      10 um   10.0 um   4.000e+07     1.782 uPhi_0         0.371 uPhi_0
  ここで当てはめた数は面密度ただ1つ、sigma_s = 5e+16 1/m^2、
  すなわち1平方ナノメートルあたり0.05個で、文献が推定する値と1桁以内で
  一致します。当てはめずに得られるのはスケールとサイズ依存性の弱さです。
  ループの1辺が2桁変わっても磁束ノイズは1桁しか変わりません。効くのは
  周長だけで、しかも平方根の下に入るからです。バルク機構なら面積に比例し
  2桁変わるはずです。測定されるマイクロ磁束量子がほぼ普遍的であることは、
  したがって表面機構の証拠です。
  同時にこれは、Code Example 3 の白色ノイズが小さい大きなループでは 1/f
  磁束ノイズが誤差予算を支配することを意味します。

同じ S_Phi を、感度が最大となるバイアス点の磁束量子ビットに持ち込む:
  dE/dPhi = 2 I_p なので df/dPhi = 2 I_p / h
  I_p (nA)   df/dPhi (GHz/mPhi_0)  sigma_Phi (uPhi_0)  sigma_f (MHz)   T2* (ns)
-------------------------------------------------------------------------------
        10                 0.0624              4.2919         0.2679     840.22
       100                 0.6242              4.2919         2.6788      84.02
       300                 1.8725              4.2919         8.0364      28.01
  sigma_Phi は S_Phi を 1e-02 Hz から 1e+06 Hz まで積分したもので、ln = 18.421 です。
  磁束感度が最大になるようにバイアスした磁束量子ビットは、1 Hz でSQUIDを
  制限するのと同じ欠陥集団によって数十ナノ秒で位相を失います。センサと
  量子ビットは同じ材料を読んでいるのです。

バリア中の2準位欠陥による臨界電流の 1/f ノイズ:
  接合間の非対称 dI_0 は L dI_0 / 2 の磁束のように見えます
  I_0 (uA)   dI_0/I_0 at 1 Hz   dI_0 (pA)   L (pH)      apparent flux
---------------------------------------------------------------------
       5.0            1.0e-05     50.0000      200       2.4180 uPhi_0
       5.0            1.0e-06      5.0000      200       0.2418 uPhi_0
      20.0            1.0e-05    200.0000      200       9.6720 uPhi_0
       5.0            1.0e-05     50.0000       20       0.2418 uPhi_0
  どちらの機構もマイクロ磁束量子のスケールに落ち、どちらもアモルファス
  酸化物の問題です。表面の不対スピンと、トンネルバリア中の2準位欠陥です。
  量子ハードウェア入門の第2章は、同じ2つの欠陥集団をトランズモンの T1 と
  磁束量子ビットの T2 の限界として挙げています。一方の改善は他方の改善です。

注目すべき点。 単一スピンの結合がスケールを決めます。幅1 $\mu$m の導線表面のスピンは $\mu_0\mu_B/2w = 0.0028\ \mu\Phi_0$ を結合し、測定可能な磁束に達するには $N \sim 4\times10^{6}$ 個を二乗和で足す必要があります。モデルの当てはめた数はちょうど1つ、面密度だけで、1平方ナノメートルあたり0.05個が10 $\mu$m ループで観測されるマイクロ磁束量子を再現します。この密度は文献の集まりより約1桁小さく、文献は $5\times10^{17}$ m$^{-2}$ 付近にあります。その食い違いは物理ではなく結合にあります。$\phi_1 = \mu_0\mu/2w$ はすべてのスピンを最もよく結合する位置に置く見積りで、およそ3倍甘く、$S_\Phi \propto \sigma_s\phi_1^2$ なので3倍大きすぎる結合は約10倍小さすぎる密度で当てはめられるのです。以下の議論は前係数に依存しません。

フィットせずにモデルが予言するのはスケーリングであり、そこが機構を同定する部分です。ループの1辺を2桁増やしても磁束ノイズは1桁しか増えません。分散が周長に従い平方根の下に入るからです。バルク機構なら2桁になったはずです。1スピンあたりの結合の $1/w$ 依存性がスピン数の $w$ 依存性を部分的に打ち消し、全体で $1/\sqrt{w}$ が残ります。細い導線のほうが騒がしいわけで、これはまさに観測されることであり、「材料が多ければ欠陥も多い」から推測するのとは逆です。

磁束量子ビットのブロックは分野横断のリンクを定量化したものです。$1\ \mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ の $1/f$ ノイズを $10^{-2}$ Hzから $10^6$ Hzまで積分すると準静的な磁束不確かさ $\sigma_\Phi = 4.29\ \mu\Phi_0$ が得られます。持続電流 $I_p = 300$ nA の磁束量子ビットは $\mathrm{d}f/\mathrm{d}\Phi = 2I_p/h = 1.87$ GHz毎ミリ磁束量子なので $\sigma_f = 8.0$ MHz であり、姉妹コースのガウス型の関係 $T_2^\ast = \sqrt{2}/2\pi\sigma_f$ を使うと $T_2^\ast = 28$ ns です。感度最大にバイアスした磁束量子ビットとして正しい桁であり、傾き $2I_p$ 以外に量子ビットの物理を一切含まない磁力計のノイズスペクトルから計算されました。

臨界電流のブロックは第2の機構が同じ場所に着地することを示して議論を締めます。200 pHのループにある5 $\mu$A 接合の $10^{-5}$ の相対 $I_0$ ノイズは 2.4 $\mu\Phi_0$ の磁束を模します。2つの機構は同じ大きさで、どちらもアモルファス酸化物の問題であり、どちらもより良い回路設計では助けられません。


3.4 磁束で材料を測る

磁化率測定という主力

材料科学におけるSQUIDの最も一般的な用途はイメージングではありません。試料の磁気モーメントを温度と印加磁場の関数として測ること — $M(T)$、$M(H)$、そして磁化率 $\chi$ — です。それらの曲線が磁気秩序、転移温度、超伝導体積分率、スピングラスの凍結、常磁性不純物量、その他多くを同定するからです。

装置はピックアップコイルに結合したSQUIDであり、通常は一様な印加磁場が結合せず局所的な双極子が強く結合するように2次のグラジオメータとして巻かれます。試料をコイルの中を通して動かし、磁束変化を記録します。第3.1節と第3.3節から2つの設計原理が出てきます。

第1に、ピックアップコイルはSQUIDループではありません。SQUIDは $\beta_L \approx 1$ を保たねばならず、それがインダクタンスしたがって面積を制限します。面積は別の超伝導ループに置き、それをSQUIDと相互結合した入力コイルに繋ぎます。これが磁束トランスで、全体が超伝導なので散逸を運びません。入力コイルをピックアップコイルに整合させ $L_i = L_p$ とすると、この組合せの実効面積は

$$ A_{\mathrm{eff}} = \frac{A_p M_i}{L_p + L_i} = \frac{k}{2}\,A_p\sqrt{\frac{L_{\mathrm{sq}}}{L_p}} $$

となり、$r_p^2/\sqrt{L_p} \sim r_p^{3/2}$ で増えます。磁場感度は $r_p^{-3/2}$ で改善し、SQUID自身は小さいままです。これがフェムトテスラ感度に到達する方法であり、Code Example 5 が計算します。

第2に、試料は動かさなければならず、それが信号を搬送周波数 — 典型的には10 Hzを十分下回る — に置きます。それはまさに第3.3節の $1/f$ 領域の内側なので、関係するノイズは白色ノイズではなく表面スピンノイズであり、実働の磁化率計の分解能は白色ノイズ床より数桁悪くなります。この差は設計の欠陥ではなく、同じ材料問題が装置仕様として現れたものです。

走査SQUID顕微鏡

ピックアップコイルをマイクロメートルスケールのループに替えて表面に近づけ、ラスタ走査します。分解能はループサイズと試料からの高さで決まり、第2章で距離が分解能を決めたのとまったく同じであり、同じラプラスの議論が適用されます。距離より細かい構造は指数関数的に減衰します。

この方法で到達できる物理は主に超伝導のものであり、しかも他のプローブが届かない物理です。個々の渦糸は磁束量子1個を運び同定可能な物体として現れるので、ピンニング点、渦格子、渦の運動、侵入障壁が直接イメージングできます。同時に巻いた磁場コイルで測る局所的なマイスナー遮蔽は超流動密度を点ごとに与え、膜や結晶の不均一性を地図にします。トポロジカル物質の端電流と表面電流、素子内の電流経路が磁束パターンとして現れます。そして局所磁化率計 — 同じ探針上の磁場コイルとピックアップループ — はマイクロメートルスケールで $\chi$ を測り、これがメゾスコピックな磁性や、名目上非磁性の膜中の常磁性島を見つける方法です。

磁束イメージングと生体磁気についての一言

2つの極の間に固定アレイの磁束イメージャがあります。室温の試料の数百マイクロメートル上をSQUIDが走査またはアレイ化され、薄い真空窓で隔てられています。分解能は距離なので数百マイクロメートルですが、試料を冷やす必要がありません。この配置が非破壊検査、実装済み電子回路の電流マッピング、地質・考古試料の残留磁化イメージングに使われるものです。

生体磁気 — 脳磁図と心磁図 — はSQUIDアレイを産業にした応用であり、ここでは地図上の位置を示すためだけに言及します。試料への低温アクセスなしにセンチメートルの距離でフェムトテスラ感度を要求するもので、それはまさに Code Example 5 の磁束トランスが与える領域であり、走査探針が与える領域のちょうど逆です。材料の測定ではないので本コースではこれ以上追いません。

SQUIDとNV中心の居場所

第2章と第3章の2つの手法は競合ではなく相補であり、境界は幾何と温度が引きます。

Code Example 5 はそれらの列に数値を入れ、分解能と感度の交換比が両方の系列で同じ $3/2$ 乗であることを見つけます。これは偶然ではありません。どちらも面積で平均することによって感度を買っているからです。

Code Example 5: ピックアップコイル、モーメント、そして地図

"""第3章 Code Example 5: ピックアップコイル、モーメント分解能、そしてSQUIDが
NV中心に勝つ場所。Code Example 4 の続き(同一セッション)。"""


def loop_L(r, a):
    """線半径 a の導線で作った半径 r のループの自己インダクタンスです。"""
    return MU0 * r * (np.log(8.0 * r / a) - 2.0)


def a_eff_transformer(r_p, L_sq, a=25e-6, k=0.7):
    """整合した超伝導磁束トランスで駆動されるSQUIDの実効面積です。
    A_eff = A_p M_i / (L_p + L_i) で、L_i = L_p(整合)かつ
    M_i = k sqrt(L_i L_sq) なので A_eff = (k/2) A_p sqrt(L_sq / L_p) です。"""
    L_p = loop_L(r_p, a)
    return 0.5 * k * np.pi * r_p**2 * np.sqrt(L_sq / L_p), L_p


S_PHI_WHITE = (0.62e-6 * PHI0) ** 2      # Code Example 3 より: 100 pH、1 pF、4.2 K
S_PHI_1F = (1.0e-6 * PHI0) ** 2          # 1 Hz で 1 uPhi_0/sqrt(Hz)

print("整合した磁束トランスは面積とインダクタンスを交換する")
print(f"  SQUIDの磁束ノイズは白色 0.62 uPhi_0/sqrt(Hz)、1 Hz で "
      f"1.0 uPhi_0/sqrt(Hz)")
print(f"\n{'r_p':>9}{'L_p (nH)':>11}{'A_p (m^2)':>12}{'A_eff (m^2)':>14}"
      f"{'A_eff/A_p':>12}{'sqrt(S_B) white':>18}{'at 1 Hz':>14}")
print("-" * 90)
for r_mm in (0.3, 1.0, 10.0, 30.0):
    A_eff, L_p = a_eff_transformer(r_mm * 1e-3, 100e-12)
    A_p = np.pi * (r_mm * 1e-3) ** 2
    print(f"{r_mm:>7.1f} mm{L_p*1e9:>11.3f}{A_p:>12.3e}{A_eff:>14.3e}"
          f"{A_eff/A_p:>12.5f}"
          f"{np.sqrt(S_PHI_WHITE)/A_eff*1e15:>13.3f} fT"
          f"{np.sqrt(S_PHI_1F)/A_eff*1e15:>11.3f} fT")
rr = np.array([0.3, 1.0, 10.0, 30.0]) * 1e-3
sb = np.array([np.sqrt(S_PHI_WHITE) / a_eff_transformer(r, 100e-12)[0]
               for r in rr])
print(f"  sqrt(S_B) の r_p に対するフィット指数 : "
      f"{np.polyfit(np.log(rr), np.log(sb), 1)[0]:.4f}")
print("  A_eff は r_p^2 / sqrt(L_p)、すなわちおおよそ r_p^(3/2) で増えるので、")
print("  磁場感度は対数を除いて r_p^(-3/2) で改善します。SQUID自体を大きくせずに")
print("  フェムトテスラ磁力計を作る方法がこれです。接合を載せるループでは beta_L")
print("  を1付近に保ち、面積は別の場所に置くのです。")

# --- モーメント分解能: 磁化率計は何を秤量できるか ---------------------------
def flux_from_dipole(m, r_loop, z):
    """半径 r のループを、軸上距離 z の点双極子が貫く磁束です。"""
    return MU0 * m * r_loop**2 / (2.0 * (r_loop**2 + z**2) ** 1.5)


print("\nモーメント分解能: 双極子がピックアップループを貫く磁束")
print(f"{'r_loop':>9}{'z':>9}{'Phi per A m^2':>17}{'delta m, white':>19}"
      f"{'delta m at 1 Hz':>19}")
print("-" * 73)
for r_mm, z_mm in [(0.05, 0.05), (1.0, 1.0), (5.0, 2.0), (10.0, 5.0)]:
    r_l, z = r_mm * 1e-3, z_mm * 1e-3
    c = flux_from_dipole(1.0, r_l, z)
    print(f"{r_mm:>7.2f} mm{z_mm:>7.2f} mm{c:>17.4e}"
          f"{np.sqrt(S_PHI_WHITE)/c:>14.4e} Am2"
          f"{np.sqrt(S_PHI_1F)/c:>14.4e} Am2")
print("  1e-18 A m^2 はおよそ10万ボーア磁子です。上の数値は磁束ノイズの床に")
print("  すぎません。実働の磁化率計はこれより数桁悪く、試料を動かさなければ")
print("  ならないため、信号が前例の 1/f ノイズが住む低周波に置かれるからです。")
print("  小さな試料で何が測れるかを決めるのは白色の列ではなく 1/f の列です。")

# --- どの手法がどこで勝つか -------------------------------------------------
print("\n1枚の地図、2つの素子系列(物理から出る桁数レベルの値):")
header = (f"{'probe':>26}{'resolution':>13}{'field noise':>16}"
          f"{'operating T':>14}{'bandwidth':>13}")
print(header)
print("-" * len(header))
rows = [
    ("single NV, scanning tip",   "20 nm",   "50 nT/rtHz",  "4 - 600 K",
     "DC - GHz"),
    ("NV ensemble, wide field",   "400 nm",  "1 nT/rtHz",   "4 - 600 K",
     "DC - GHz"),
    ("scanning SQUID, 1 um loop", "1 um",    "3 pT/rtHz",   "below 10 K",
     "DC - MHz"),
    ("SQUID, 25 um loop",         "25 um",   "0.7 pT/rtHz", "below 10 K",
     "DC - MHz"),
    ("SQUID + 10 mm transformer", "10 mm",   "0.2 fT/rtHz", "below 10 K",
     "DC - MHz"),
]
for row in rows:
    print(f"{row[0]:>26}{row[1]:>13}{row[2]:>16}{row[3]:>14}{row[4]:>13}")
d_size = np.log10(1e-2 / 2e-8)
d_field = np.log10(50e-9 / 0.2e-15)
print(f"  最上段から最下段まで: 線寸法 {d_size:.1f} 桁で磁場ノイズ "
      f"{d_field:.1f} 桁を")
print(f"  買っており、傾きは {d_field/d_size:.2f} です。これは上で2つの系列が")
print("  それぞれ独立に出した 3/2 と同じ値で、どちらも空間分解能を同じ幾何を")
print("  通して感度に交換しているからです。")
print("  スケールしない列こそ興味深い列です。SQUIDには超伝導体が必要なので寒冷が")
print("  必要ですが、NVは600 Kでも動きます。SQUIDは集中定数回路なのでMHzで止まり")
print("  ますが、NVは2.87 GHzの遷移をもち T1 を通じてGHzのノイズを直接読みます。")
整合した磁束トランスは面積とインダクタンスを交換する
  SQUIDの磁束ノイズは白色 0.62 uPhi_0/sqrt(Hz)、1 Hz で 1.0 uPhi_0/sqrt(Hz)

      r_p   L_p (nH)   A_p (m^2)   A_eff (m^2)   A_eff/A_p   sqrt(S_B) white       at 1 Hz
------------------------------------------------------------------------------------------
    0.3 mm      0.967   2.827e-07     3.183e-08     0.11257       40.281 fT     64.969 fT
    1.0 mm      4.735   3.142e-06     1.598e-07     0.05086        8.024 fT     12.941 fT
   10.0 mm     76.289   3.142e-04     3.981e-06     0.01267        0.322 fT      0.519 fT
   30.0 mm    270.284   2.827e-03     1.903e-05     0.00673        0.067 fT      0.109 fT
  sqrt(S_B) の r_p に対するフィット指数 : -1.3898
  A_eff は r_p^2 / sqrt(L_p)、すなわちおおよそ r_p^(3/2) で増えるので、
  磁場感度は対数を除いて r_p^(-3/2) で改善します。SQUID自体を大きくせずに
  フェムトテスラ磁力計を作る方法がこれです。接合を載せるループでは beta_L
  を1付近に保ち、面積は別の場所に置くのです。

モーメント分解能: 双極子がピックアップループを貫く磁束
   r_loop        z    Phi per A m^2     delta m, white    delta m at 1 Hz
-------------------------------------------------------------------------
   0.05 mm   0.05 mm       4.4429e-03    2.8856e-19 Am2    4.6543e-19 Am2
   1.00 mm   1.00 mm       2.2214e-04    5.7713e-18 Am2    9.3085e-18 Am2
   5.00 mm   2.00 mm       1.0058e-04    1.2746e-17 Am2    2.0559e-17 Am2
  10.00 mm   5.00 mm       4.4959e-05    2.8516e-17 Am2    4.5994e-17 Am2
  1e-18 A m^2 はおよそ10万ボーア磁子です。上の数値は磁束ノイズの床に
  すぎません。実働の磁化率計はこれより数桁悪く、試料を動かさなければ
  ならないため、信号が前例の 1/f ノイズが住む低周波に置かれるからです。
  小さな試料で何が測れるかを決めるのは白色の列ではなく 1/f の列です。

1枚の地図、2つの素子系列(物理から出る桁数レベルの値):
                     probe   resolution     field noise   operating T    bandwidth
----------------------------------------------------------------------------------
   single NV, scanning tip        20 nm      50 nT/rtHz     4 - 600 K     DC - GHz
   NV ensemble, wide field       400 nm       1 nT/rtHz     4 - 600 K     DC - GHz
 scanning SQUID, 1 um loop         1 um       3 pT/rtHz    below 10 K     DC - MHz
         SQUID, 25 um loop        25 um     0.7 pT/rtHz    below 10 K     DC - MHz
 SQUID + 10 mm transformer        10 mm     0.2 fT/rtHz    below 10 K     DC - MHz
  最上段から最下段まで: 線寸法 5.7 桁で磁場ノイズ 8.4 桁を
  買っており、傾きは 1.47 です。これは上で2つの系列が
  それぞれ独立に出した 3/2 と同じ値で、どちらも空間分解能を同じ幾何を
  通して感度に交換しているからです。
  スケールしない列こそ興味深い列です。SQUIDには超伝導体が必要なので寒冷が
  必要ですが、NVは600 Kでも動きます。SQUIDは集中定数回路なのでMHzで止まり
  ますが、NVは2.87 GHzの遷移をもち T1 を通じてGHzのノイズを直接読みます。

注目すべき点。 トランスの表は大きなピックアップコイルがどれほど悪く結合しているか、それでもなぜ価値があるかを示します。10 mmコイルの幾何面積のうち実効面積として残るのは1.3%だけです。$A_{\mathrm{eff}}$ が $\sqrt{L_{\mathrm{sq}}/L_p}$ で抑制され、ピックアップのインダクタンスがSQUIDより3桁上だからです。しかし3 cm$^2$ の1.3%はなお4 mm$^2$ で、裸の25 $\mu$m ループより3桁大きいので、磁場ノイズは白色で0.32 fT/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$、1 Hzで0.52 fT/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$ まで落ちます。フィット指数は $-1.39$ で、代数の予言する $-3/2$ に近く、$L_p(r_p)$ の対数だけ緩和しています。

モーメントの表が材料科学者が実際に必要とする数値です。ミリメートルスケールのピックアップループと1 mm離れた試料は、白色ノイズ床で毎ルートヘルツ $5.8\times10^{-18}$ A m$^2$、1 Hzの $1/f$ ノイズに対して $9.3\times10^{-18}$ A m$^2$ を分解します。$10^{6}$ ボーア磁子程度です。実働の装置はこれより数桁足りず、その理由は第2列にあります。試料の搬送が信号を低周波に置き、そこでは第3.3節の表面スピンノイズが支配し、さらにその上に振動、温度ドリフト、試料ホルダのモーメントが乗ります。磁束ノイズ床は限界であって仕様ではありません。

最後の表が地図です。20 nmの走査NVから10 mmの磁束トランスまで線寸法5.5桁にわたって磁場ノイズは8.5桁落ちます。傾き1.47で、2つの素子系列がそれぞれ自身の幾何から独立に出した $3/2$ と同じ値です。パターンを破る列こそ興味深い列です。動作温度と帯域はサイズにまったくスケールせず、そしてそれが与えられた測定にどの装置が必要かを実際に決めるものです。


演習

演習1: SQUIDの仕様を読む

あるdc SQUIDが $L = 200$ pH、$C = 0.5$ pF、動作温度4.2 Kと表示されています。

  1. $\beta_L = \beta_c = 1$ を満たす臨界電流とシャント抵抗はいくらですか。
  2. $\epsilon$、$\sqrt{S_\Phi}$、$V_\Phi$ を計算してください。
  3. ループが1辺40 $\mu$m の正方形だとすると、どれだけの磁場ノイズになり、第2.3節の単一NVのAC感度51 nT/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$ と比べてどうですか。
  4. 製造者は代わりに1 Hzで3 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ と表示しています。この差は何を教え、最初に何を変えますか。
解答

1. \(I_0 = \Phi_0/2L = 2.0678\times10^{-15}/(4\times10^{-10}) = 5.170\ \mu\mathrm{A}\)。\(R = \sqrt{L/(\pi C)} = \sqrt{2\times10^{-10}/(\pi\times5\times10^{-13})} = \sqrt{127.3} = 11.28\ \Omega\)。

2. \(\epsilon = 8\sqrt{\pi}k_BT\sqrt{LC} = 14.180\times5.799\times10^{-23}\times\sqrt{10^{-22}} = 8.22\times10^{-33}\) J/Hz \(= 78.0\,\hbar\) で、100 pH・1 pFの素子と同じです。\(LC\) が同じだからです。\(S_\Phi = 2L\epsilon = 3.29\times10^{-42}\) Wb\(^2\)/Hz なので \(\sqrt{S_\Phi} = 1.814\times10^{-21}\) Wb \(= 0.877\ \mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}\)。\(V_\Phi = R/L = 5.64\times10^{10}\) V/Wb \(= 117\ \mu\)V/\(\Phi_0\)。

3. \(A = (40\ \mu\mathrm{m})^2 = 1.6\times10^{-9}\) m\(^2\) なので \(\sqrt{S_B} = 1.814\times10^{-21}/1.6\times10^{-9} = 1.13\) pT/\(\sqrt{\mathrm{Hz}}\)。単一NVの51 nT/\(\sqrt{\mathrm{Hz}}\) より45 000倍良く、空間分解能は2000倍悪い。傾きは \(\log(4.5\times10^4)/\log(2\times10^3) = 1.41\) で、第3.4節が地図全体で見つける 3/2 と同じです。

4. 表示値は白色ノイズ床の3.4倍で、しかも1 Hzでの値です。そこはまさに第3.3節の \(1/f\) 表面スピンノイズが住む場所です。回路には何の問題もありません。素子は自分自身の表面で制限されているのです。したがって最初に変えるのは \(R\)、\(L\)、\(T\) ではなく表面処理と線幅であり、測定が許せば動作周波数です。信号を \(1/f\) クロスオーバーより上へ移せば白色ノイズ床が回復します。変調バイアスの磁束ロックループがそのためにあります。

import numpy as np
h, e, kB, hbar = 6.62607015e-34, 1.602176634e-19, 1.380649e-23, 1.054571817e-34
PHI0 = h / (2 * e)
L, C, T = 200e-12, 0.5e-12, 4.2
I0, R = PHI0 / (2 * L), np.sqrt(L / (np.pi * C))
eps = 8 * np.sqrt(np.pi) * kB * T * np.sqrt(L * C)
SPhi = 2 * L * eps
print(f"I0 = {I0*1e6:.3f} uA   R = {R:.2f} ohm   eps = {eps/hbar:.1f} hbar")
print(f"sqrt(S_Phi) = {np.sqrt(SPhi)/PHI0*1e6:.3f} uPhi0   "
      f"V_Phi = {R/L*PHI0*1e6:.1f} uV/Phi0")
print(f"sqrt(S_B) = {np.sqrt(SPhi)/1.6e-9*1e12:.3f} pT/rtHz")
# I0 = 5.170 uA   R = 11.28 ohm   eps = 78.0 hbar
# sqrt(S_Phi) = 0.877 uPhi0   V_Phi = 116.7 uV/Phi0
# sqrt(S_B) = 1.133 pT/rtHz

演習2: 遮蔽を静的に

Code Example 2 は $I_c(\Phi)$ をRSJ積分器の二分法で得ました。時間積分なしで再現してください。

  1. 2つの静的な式と磁束の拘束条件を書き、$(\sin\varphi_1 - \sin\varphi_2)/2 = [(\varphi_2-\varphi_1) - 2\pi\varphi_e]/(\pi\beta_L)$ のもとで $I_b = I_0(\sin\varphi_1 + \sin\varphi_2)$ となることを示してください。
  2. $\varphi_e = 1/2$、$\beta_L = 0.2, 0.5, 1, 2$ について数値的に最大化し、Code Example 2 が出力した値と比較してください。
  3. どの $\beta_L$ でも $I_c(0) = 2I_0$ になる理由を説明してください。
  4. $\beta_L \gg 1$ に対する標準的な見積りは $\Delta I_c \approx \Phi_0/L$ です。$\beta_L = 2$ で検証し、論評してください。
解答

1. 静的とは \(\dot\varphi = 0\) なので各接合は超伝導電流だけを運びます。\(I_0\sin\varphi_1 = I_b/2 + J\)、\(I_0\sin\varphi_2 = I_b/2 - J\)。足すと \(I_b = I_0(\sin\varphi_1+\sin\varphi_2)\)、引くと \(J = I_0(\sin\varphi_1-\sin\varphi_2)/2\)。\(J\) を \(\varphi_2-\varphi_1 = 2\pi(\Phi_{\mathrm{ext}} + LJ)/\Phi_0\) に代入し \(\beta_L = 2LI_0/\Phi_0\) を使えば述べた拘束条件になります。

2. \(\varphi_1\) を走査して各点で拘束条件を \(\varphi_2\) について解くと、\(I_0\) 単位で0.30454、0.67198、1.04716、1.39304 が得られ、積分器の0.30467、0.67208、1.04725、1.39313 に対して4桁一致します。残る差は二分法の許容誤差であって物理的な効果ではありません。

3. \(\varphi_e = 0\) では対称解 \(\varphi_1 = \varphi_2\) がどの \(\beta_L\) でも \(J = 0\) で拘束条件を満たし、しかも \(\varphi_1 = \varphi_2 = \pi/2\) で \(\sin\varphi_1 + \sin\varphi_2\) を最大化します。循環電流が不要なのでループインダクタンスは無関係であり \(I_c = 2I_0\) です。

4. \(\beta_L = 2\) では \(\Phi_0/L = 2I_0/\beta_L = I_0\) なので見積りは \(I_c(\Phi_0/2) = 2I_0 - I_0 = I_0\) を予言しますが、計算は \(1.393\,I_0\) を与えます。見積りは28%低い。動作点でループが遮蔽電流 \(\Phi_0/2L\) の全量を生まねばならないと仮定していますが、2つの接合の位相が再配分してそれを分担するのでコストは過大評価されます。この見積りは \(\beta_L\) について漸近的であり、素子が作られる1付近では使うべきではありません。

import numpy as np
from scipy.optimize import brentq
def ic_static(pe, bL, n=4001):
    best = 0.0
    for p1 in np.linspace(-np.pi, np.pi, n):
        g = lambda p2: ((np.sin(p1) - np.sin(p2)) / 2
                        - ((p2 - p1) - 2 * np.pi * pe) / (np.pi * bL))
        c = p1 + 2 * np.pi * pe
        xs = np.linspace(c - np.pi, c + np.pi, 201)
        gs = np.array([g(x) for x in xs])
        for k in range(len(xs) - 1):
            if gs[k] * gs[k + 1] < 0:
                best = max(best, np.sin(p1) + np.sin(brentq(g, xs[k], xs[k + 1])))
    return best
print([round(float(ic_static(0.5, b)), 5) for b in (0.2, 0.5, 1.0, 2.0)])
# [0.30454, 0.67198, 1.04716, 1.39304]

演習3: エネルギー分解能を項ごとに

  1. $S_V = 16k_BTR$、$V_\Phi = R/L$、$\epsilon = S_\Phi/2L$ から出発して $\epsilon = 8k_BTL/R$ を導いてください。
  2. $\beta_c = 1$ と $\beta_L = 1$ を課して $R$ と $I_0$ を消去し $\epsilon = 8\sqrt{\pi}k_BT\sqrt{LC}$ を得てください。
  3. $L = 100$ pH、$C = 1$ pF について、この式が $\epsilon = \hbar$ を返すのはどの温度ですか。その答えの何がおかしいですか。
  4. 同僚が $\epsilon$ で1桁稼ぐために $C$ を100分の1にすることを提案しました。他に何が変わり、この提案は妥当ですか。
解答

1. \(S_\Phi = S_V/V_\Phi^2 = 16k_BTR\cdot(L/R)^2 = 16k_BTL^2/R\) なので \(\epsilon = S_\Phi/2L = 8k_BTL/R\)。

2. \(\beta_c = 2\pi I_0R^2C/\Phi_0 = 1\) から \(R^2 = \Phi_0/(2\pi I_0 C)\)、\(\beta_L = 2LI_0/\Phi_0 = 1\) から \(I_0 = \Phi_0/2L\)。代入して \(R^2 = \Phi_0\cdot 2L/(2\pi\Phi_0 C) = L/(\pi C)\) なので \(R = \sqrt{L/(\pi C)}\)、したがって \(\epsilon = 8k_BTL\sqrt{\pi C/L} = 8\sqrt{\pi}k_BT\sqrt{LC}\)。

3. \(\sqrt{LC} = 10^{-11}\) s なので \(T = \hbar/(8\sqrt{\pi}k_B\sqrt{LC}) = 1.0546\times10^{-34}/(14.180\times1.3806\times10^{-23}\times10^{-11}) = 53.9\) mK。この答えは信用できないという意味で誤りです。導出は完全に古典的で、シャントを \(S_I = 4k_BT/R\) のジョンソン抵抗として扱い、\(hf \gtrsim k_BT\) になると支配的になる零点項 \(2\pi\hbar f/R\) を無視しています。54 mKでは関係する周波数はGHz程度のジョセフソン周波数で、それに対して \(hf/k_B \approx 50\) mK なので量子補正はちょうど1のオーダーです。誠実な言い方は \(\epsilon\) が \(\hbar\) のオーダーで飽和するということです。

4. \(C\) を100分の1にすると \(\sqrt{LC}\) が10分の1、\(\epsilon\) も10分の1になり、それは \(R\) を10倍にできることを通じて実現されます。しかし \(\sqrt{S_\Phi} = \sqrt{2L\epsilon}\) は \(\sqrt{10}\) 分の1にしかならず、\(V_\Phi = R/L\) は10倍になるのでSQUID自身の電圧ノイズは増幅器のノイズに対して相対的に下がります。二重に効くわけです。物理としては妥当です。困難は作製です。接合容量は面積に比例するので100分の1は各方向に10分の1の接合を意味し、臨界電流のばらつきが増え、\(1/f\) 臨界電流ノイズ(面積に反比例)が増え、やがて \(E_C\) が \(E_J\) と同程度になります。その時点で位相は古典的でなくなり、素子は磁力計ではなく量子ビットになります。

演習4: 作製変更を診断する

名目上同一のdc SQUIDの2つのバッチを測定しました。どちらも $L = 150$ pH で4.2 Kで動作します。

バッチ 白色 $\sqrt{S_\Phi}$ 1 Hzの $\sqrt{S_\Phi}$ $1/f$ クロスオーバー
A 0.75 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ 1.1 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ 2 Hz
B 0.76 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ 6.0 $\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}$ 60 Hz
  1. 白色ノイズが等しいことは2つのバッチの $R$、$C$、$I_0$ について何を教えますか。
  2. 1辺20 $\mu$m のループ、1 $\mu$m の導線として、Code Example 4 のモデルを使って各 $1/f$ 振幅が含意する表面スピン密度を見積もってください。
  3. バッチBについて別の説明を1つ挙げ、それを表面スピンと区別する測定を1つ挙げてください。
  4. 同じウェハ上に $I_p = 200$ nA で作製した磁束量子ビットについて、各バッチは何を含意しますか。
解答

1. 白色磁束ノイズは \(\sqrt{16k_BTL^2/R}\) なので、同じ \(L\) と \(T\) で白色ノイズが等しいことは \(R\) が3%以内で等しいことを意味します。\(\beta_c\) が \(R^2C I_0\) で、\(\beta_L\) が \(LI_0\) で決まるので、\(L\) が同じなら \(I_0\) も同じ、したがって \(C\) も同じです。接合とシャントは同一で、回路には何も変化がありません。

2. モデルは \(\sqrt{S_\Phi(1\,\mathrm{Hz})} \propto \sqrt{\sigma_s}\) を与え、Code Example 4 は \(\sigma_s = 5\times10^{16}\) m\(^{-2}\) で1 \(\mu\)m 導線の10 \(\mu\)m ループについて 1.175 \(\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}\) を返します。20 \(\mu\)m ループは周長が2倍なので \(\sqrt{2}\) 倍のノイズ、同じ密度で 1.662 \(\mu\Phi_0/\sqrt{\mathrm{Hz}}\) です。したがってバッチAの1.1は \(\sigma_s = 5\times10^{16}\times(1.1/1.662)^2 = 2.2\times10^{16}\) m\(^{-2}\)、バッチBの6.0は \(6.5\times10^{17}\) m\(^{-2}\) を含意し、30倍多いスピンです。モデルの絶対的な前係数が桁数レベルで不確かであることを踏まえれば、擁護できる主張は*比*、すなわちバッチBの揺動子密度が30倍であることです。

3. 別の説明はバリア欠陥による臨界電流ノイズで、これも \(1/f\) を与え白色ノイズを変えません。区別はバイアス依存性です。\(I_0\) の非対称による見かけの磁束は \(I_0\) に比例し、バイアス電流の向きで反転しますが、表面スピンの磁束ノイズはそうしません。したがってバイアス反転測定が両者を分離し、まさにこの理由で標準的な手法になっています。第2の判別材料は温度依存性で、熱活性化されたバリア欠陥は表面スピンとは異なる指数で凍結します。

4. \(\mathrm{d}f/\mathrm{d}\Phi = 2I_p/h = 1.248\) GHz毎m\(\Phi_0\)。各 \(1/f\) 振幅を \(10^{-2}\) から \(10^{6}\) Hzで積分すると \(\sigma_\Phi = \sqrt{S_\Phi(1)\ln(10^8)} = 4.72\) と 25.75 \(\mu\Phi_0\)、したがって \(\sigma_f = 5.89\) と 32.15 MHz、\(T_2^\ast = \sqrt{2}/(2\pi\sigma_f) = 38.2\) と 7.0 ns です。バッチBのウェハは5.5倍悪い磁束量子ビットを作ることになり、SQUID測定 — 4 Kで午後1回 — がどの量子ビットを作る前にそれを予言しました。第3.3節の実務的な内容がこれです。

import numpy as np
h = 6.62607015e-34
PHI0 = h / (2 * 1.602176634e-19)
for S1_u, Ip in [(1.1, 200e-9), (6.0, 200e-9)]:
    sig = S1_u * 1e-6 * PHI0 * np.sqrt(np.log(1e8))
    sf = 2 * Ip / h * sig
    print(f"sigma_s = {5e16*(S1_u/1.662)**2:.3e} 1/m2   "
          f"sigma_Phi = {sig/PHI0*1e6:6.2f} uPhi0   sigma_f = {sf/1e6:6.2f} MHz"
          f"   T2* = {np.sqrt(2)/(2*np.pi*sf)*1e9:6.2f} ns")
# sigma_s = 2.190e+16 1/m2   sigma_Phi =   4.72 uPhi0   sigma_f =   5.89 MHz   T2* =  38.19 ns
# sigma_s = 6.516e+17 1/m2   sigma_Phi =  25.75 uPhi0   sigma_f =  32.15 MHz   T2* =   7.00 ns

演習5: 装置を選ぶ

単層厚のファンデルワールス磁性体の5 $\mu$m × 5 $\mu$m のフレークについて、4 Kから200 Kまでの温度関数として磁化を測らなければなりません。

  1. 1平方ナノメートルあたり15ボーア磁子として、フレークの総モーメントを見積もってください。
  2. Code Example 5 で計算したモーメント分解能をもつバルク磁化率計で測れますか。白色ノイズと1 Hzの両方の数値について答えてください。
  3. 第2.5節のモデルを使って、フレークの端から50 nmで走査NVが見る漏れ磁場と、51 nT/$\sqrt{\mathrm{Hz}}$ で必要な平均時間を見積もってください。
  4. どの装置がこの問いに答えますか。決め手となる制約は何ですか。
解答

1. 面積 \(2.5\times10^{-11}\) m\(^2\) = \(2.5\times10^{7}\) nm\(^2\) なので \(3.75\times10^{8}\) ボーア磁子、すなわち \(m = 3.75\times10^{8}\times9.274\times10^{-24} = 3.48\times10^{-15}\) A m\(^2\)。

2. 紙の上では余裕をもって可能です。Code Example 5 はミリメートルのピックアップループについて白色で \(5.8\times10^{-18}\) A m\(^2\)/\(\sqrt{\mathrm{Hz}}\)、1 Hzで \(9.3\times10^{-18}\) を与えるので、フレークは1秒でノイズの400倍から600倍です。実際にはたいてい不可能で、実働の磁化率計が磁束ノイズ床より数桁上に座ることに加え、より重要なことに、試料ホルダと基板が \(3.5\times10^{-15}\) A m\(^2\) より桁違いに大きい背景モーメントを寄与するからです。この測定はノイズ律速ではなく背景律速です。2次元試料でバルク磁気測定が失敗する標準的な理由がこれです。

3. 面モーメント \(m_s = 15\times9.274\times10^{-24}/10^{-18} = 1.391\times10^{-4}\) A。端磁場 \(\mu_0 m_s/(2\pi d) = 1.2566\times10^{-6}\times1.391\times10^{-4}/(2\pi\times5\times10^{-8}) = 5.56\times10^{-4}\) T \(= 556\ \mu\)T。51 nT/\(\sqrt{\mathrm{Hz}}\) に対して信号対雑音比1に要する時間は \((51\times10^{-9}/5.56\times10^{-4})^2 = 8.4\times10^{-9}\) s。感度はまったく制約ではなく、走査時間と距離の安定性が制約です。

4. 走査NVが答えます。決め手は感度ではなく — どちらの装置も十分もっています — 背景です。NVはフレークの磁場を局所的に測り、数百ナノメートル以上離れたものはほとんど寄与しませんが、バルク磁化率計はフレークと基板とホルダを併せて測り分離できません。温度範囲も決定的です。4から200 KはNVの動作範囲の内側でセンサを変える必要がありませんが、バルク装置は自身の校正をまたぐことになります。これが一般則です。関心のある信号が大きな試料の小さな一部であるとき、ノイズ床がどちらが良いかにかかわらず局所プローブが勝ちます。


まとめ

要点

1. この素子は磁束を測り、磁束は小さな単位で量子化されている

2. 同じ接合が $E_J/E_C$ に応じて量子ビットかセンサになる

3. RSJモデルが $V(\Phi)$ を与え、その数値は教科書的な近似ではない

4. 白色ノイズと、自由パラメータのないエネルギー分解能

5. $1/f$ ノイズは量子ビットと同じ材料問題である

6. 応用は幾何、温度、背景で決まる

実務上の含意

第4章は固体を離れます。原子時計と原子干渉計は、母材をまったく持たない — したがって $1/f$ ノイズも表面スピンも作製ばらつきもない — 系に第1章と同じRamsey系列を使い、その代価として真空槽とレーザー系を要します。第2章、第3章、第4章を併せて読めば、トレードオフの全域が見えます。結晶中の欠陥、チップ上の回路、自由空間の原子、いずれも位相を測っているのです。

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